EXCLUSIVE INTERVIEW ETANA

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PHOTO  キングストン郊外。山腹にある駐車場がETANAの旦那さん、ANDREが指定した場所だとタクシーの運転手さんに言われたときは、面食らった。とりあえず運転手さんに待ってもらって、駐車場の奥に行ったら、下は河原。さらに覗き込むと、岩の上にカメラが据えてあり、その先にアコースィック・ギターを手にしたETANAがいた。シングル「Reggae」のヴィデオの撮影の一こまだ。
 「あれくらいリズム感がないラスタマンも珍しいわね!」ーこのシーンの撮影が終わって車に乗り込むと、さっそく歯に衣着せぬETANA節が炸裂。ギターのうしろでふたりのラスタマンが旗を振っていたのだが、たしかにひとりは曲に合わせてリズムを取れていなかったから、笑ってしまった。次の撮影場所に移動する車中でのインタヴュー。ETANAの膝にはこの世に生まれてからまだ4ヶ月しか経っていないNYLA(ナイラ) ちゃんが座っている、という設定。

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BETTER TOMORROW
BETTER TOMORROW

VP RECORDS / VP1950 / IMPORTS
US: FEB.18 Release!!

01. SPOKENSOUL
02. QUEEN
03. REGGAE
04. BEAUTIFUL DAY 05. ALL I NEED
06. WHOLE NEW WORLD
07. 4 PLAY 2 LOVE (START OVER)
08. SILLY
09. TIL YOU GET OLD
10. THE PRAYER
11. STRONGEST
12. BE OK (INTERLUDE)
13. SMILE
14. BETTER TOMORROW

Producer(s) : SHANE BROWN for JUKE BOXX RECORDS

 2年ぶり3作目の『BETTER TOMORROW』は、全曲をSHANE BROWNが手がけている。彼の名前を聞いてピンと来ない人に説明すると、タフ・ゴング・スタジオの有名エンジニア、ERROL BROWNの息子にして、自身もエンジニア/プロデューサー、BUSY SIGNALのマネージャーとしてもつい最近まで活動していたレゲエ界の重要人物だ。BUSYが全面的にレゲエに取り組んだ『REGGAE MUSIC AGAIN』も彼のプロデュース作品。プロデューサーをひとりに絞った理由を尋ねるところから、始めた。


 「今回はストーリーを余すところなく伝えるのに、ひとりのプロデューサーと組んだ方がいいと思ったの。複数のプロデューサーと組むと、複数のサウンドとミックスが入るでしょ。プロデューサーは大体、ミックスまで自分でやりたがるもので、もし、5人のプロデューサーと組んだら、5つのサウンドが入って来て、ひとつの物語を紡ぐ、という目的がブレてしまう」


 その目的はしっかり果たされた。『BETTER TOMORROW』は、 最初から最後まで気持ちよく通して聴ける、アルバムらしいアルバムに仕上がっている。後日、BUSYの取材でSHANE BROWNと話す機会に恵まれた。ETANAを「いま、レゲエでもっとも美しい声を持つシンガー」と手放しでほめ、このプロジェクトは実にスムーズに進んだと言っていた。ふたりの相性の良さは、ETANAも認める。


 「彼は最初のアルバムからエンジニアとして参加していたから、才能があるのは知っていたの。彼には昔ながらのレゲエを2013年に蘇らせたい、というアイディアがあって、私は私で、レゲエについての曲を作りたい、とずっと思っていたから、ぴったり合った感じ。いま、レゲエをきちんと保存しようという意見が北米やジャマイカの一部にあって、私も賛成だから自分で答えを出したつもり。海外に行けば、レゲエのフェスティバルがたくさんあって、盛り上がっているように見えるけれど、本場のジャマイカでは大切にされていない。だから、私なりにレゲエへの愛を歌にしたかった」


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 オープニングの「Spoken Soul」は5分を越すスポークン・ワードと大胆だ。

 「真の音楽好きだったら、5分だろうが10分だろうが、楽しんでくれるだろうと思った。ポエトリーが好きな人も気に入ってくれるだろうと思ったし。限界は定めない」

 レゲエにもダブ・ポエットの大御所、MUTABARUKAがいるが、ETANAがやっているのはもう少し柔らかな、USのスポークン・ワード、カフェなどで行われるポエトリー・リーディングに近い。フロリダに住んでいたときに、そういったイベントも行っていたのだろうか。

 「すごく好きだったの。自分でやってみるところまでは行かなかったけれど。JILL SCOTTは出て来たとき、たくさんポエトリーをやっていて、ファンだった。INDIA ARIEはもっと音楽的だけれど、詩的な要素が強いし、よく聴いていたわね」

PHOTO  実は、このふたりはアメリカの雑誌がETANAを紹介する際に、「ジャマイカ版JILL SCOTT/INDIA ARIE」などと引き合いに出していたことがある。

 「あれはちょっと妙だと思ったな。ETANAはETANAだし。ただ、共通点があるのは分かる。R&Bでもソウルでも、私はルーツ・ミュージックが好きなのよ」

 BOB MARLEY「Concrete Jungle」をほうふつとさせる「Queen」みたいなガチッとしたレゲエもあれば、朝一番に聴きたい軽やかな「Beautiful Day」もある。「Beautiful Day」ではかなりの高音域で歌っていて、驚く。

 「シンガーとして成長しているのもあるけれど、とにかく幸せな気分で歌った結果があれなの。妊娠の真最中でもうほかのことは考えられないっていう状態で」


 日記を読んでいるような親密さがある「All I Need」は、ジャマイカ賛歌だ。

 「ツアー中にジャマイカが恋しくなって、少しでもジャマイカを感じられるもの、ほんの少しでアキー(アキー&ソルトフィッシュの料理でも知られるジャマイカで一般的な植物)でもいいから欲しいなぁ、って思ったときに出て来た曲」

 「Whole New World」では、R&B寄りの歌い回しもできる強みを発揮。愛情に溢れた1曲で、旦那さんについての曲かと思ったら、「それもあるし、彼女が私の人生の一部になって…といういまの私の世界のすべてを歌っている曲ね」とNYLAちゃんを持ち上げながら答えた。「Till You Get Old (Life's Gift)」では丸1曲、そのNYLAちゃんへの思いを歌っている。「彼女が理解できるようになったときに、『お母さんはこんな風に思っていたのよ』と伝えられる曲を作っておきたかった」

 全体的にこれまでの作品よりパーソナル。もちろん、ETANAらしい力強い「Strongest」もあるし、メッセージ性が高い「Smile」も引きつけられる。

 「『Smile』はもうほかに打つ手がないときでも、とにかく微笑みましょうっていう曲なの。みんなにインスピレーションを与えるような曲を作ろうと思って…問題を思い出すような曲をたくさん作って落ち込んでしまうより、このアルバムではポジティヴな気分になるようにしたかった。問題はあるけれど、元気を出しましょうっていう気持ちを込めた」

 こういう曲が似合うようになって来たのが、何よりの成長の証だろう。筆者のお気に入りは、タイトル・トラックでもある「Better Tomorrow」 。堂々7分半に及ぶ壮大なエンディングだ。途中で、アフロビートを意識したコーラスが入るの秀逸。

 「あの曲は、聴いている人を旅に誘えるような曲よね。曲の始まりにどこにいても、最後の方で必ずアフリカに連れて行ってくれる…最初はベース・ラインしかなかったの。それに合わせてメロディーを作って書き始めたから、トラックが来たときはすでに頭の中で一曲ができていた。それに沿ってどんどん歌って行ったら、SHANEが『もう5分以上歌っているって分かってるよね?』って言い出して(笑)。『音楽好きなら分かってくれるはず』って言い返して、歌い続けた。伝えたいことを言い切るのに、長い行程になる曲があったっていい」

 自分のうちから溢れ出て来る思いとメロディーを自由に形にしていったようだが、全体がよくまとまっているのは、ETANAが一歩下がって任せる、ということを学んだかららしい。「性格的に、その方が難しかったのでは?」と指摘したら、「とっても!」と笑った。

 「音楽はSHANEと私で作って、その先は曲の順番とかインタールードは(VP RECORDSのA&R)NEIL DIAMONDに任せた。ダブがどこに入るかとか、ベースだけを前に出すとか、そういうのはSHANEに好きなようにやってもらったし。どうしても気に入らないところは、意見を伝えて変えてもらったけれど。私にしては珍しいし、難しいことだったけれど、仕上がりがとても美しかったから満足している」


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 なんでも自分で仕切らないで、周りを信用して新しい「自分らしさ」を引き出してもらったケースだろう。瞑想を好み、「自分を“静”の状態に持って行って答えを引き出す」のを実践しているのもETANAの一面だ。だいたい、自分の意に反して曲を書いたのがきっかけで、いまの彼女があるのだ。ETANAが、〈5TH ELEMENT〉にいた頃、RICHIE SPICEのバックアップ・シンガーだったのも遠い過去の気がする。

PHOTO 「実を言うとね、バックアップ・シンガーが楽し過ぎて、ソロで歌うことは考えていなかったの。その前に(アメリカで)ガールズ・グループとして活動して挫折した経験をしていたから、もう十分、と思っていて。だから、マネージメントに何度も言われて半年くらいかけてやっと書いた曲が『Wrong Address』。あれがヒットして、周りがもうバックアップ・シンガーじゃなくて、ひとりでステージに行って歌えと言われたときは哀しかった。RICHIEとステージに上がる直前に引き止められたのよ!一緒に歌いたくてステージの袖でジリジリしていたわ」

 そのRICHIE SPICEとは「次のアルバムでぜひ一緒に曲を作りたい」と張り切って言っていた。今年は、大きなツアーが2つ控えているという。

 「まだ進出し切れていない地域がたくさんあるの。今年の初めにニュージーランドに行ったけれど、すばらしい反応だった。まだまだ行ったことない国はたくさんあるから、楽しみにしている」
 レゲエの新女王、と呼ばれ始めてもいる。「クィーン・オブ・レゲエ」のMARCIA GRIFFITHSもいるので、それについてどう思うか最後に聞いてみた。

 「そうね…私はMARCIAが大好きだから、彼女にしばらく君臨していてもらいたいかな。シンガーとして大先輩なだけでなく、とてもスィートな人なのよ。私は、その道を目指して修行中ってことでいいわ」

 「とりあえず、<プリンセス・オブ・レゲエ>はどうでしょう?」と冗談めかして言ったら、「それいい! その肩書きならやって行けるかも」と、いつもの大輪のひまわりのような笑顔を見せた。このスマイルの素が入っている『BETTER TOMORROW』で、日本のレゲエ・ファンにも笑顔が伝染しますように。


Interview & Text By MINAKO IKESHIRO
Blog:http://reggaeblog.dtiblog.com/
Twitter:@minakodiwriter


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▲ ETANA新作『BETTER TOMORROW』特集〜「歌姫」から「女王」へ。 STICKER


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