RICHIE SPICE INTERVIEW

RICHIE SPICE / BOOK OF JOB

 「ナイス・ヴァイブス」という言葉を、リッチー・スパイスは35分56秒の電話インタヴューの間に、18回ほど口にした。元々、話すより歌う方が得意なタイプだ。03年に初めて対面取材をして以来、インタヴューは4度目だが、淡々と、脚色なしで話す態度は変わらない。

 00年にハートビートから出した『UNIVERSAL』から通算5枚目にあたる新作は、『BOOK OF JOB』とのタイトルがついている。旧約聖書にある「ヨブ記」について、聖書になじみが薄い(であろう)レゲエ・ファンを代表して、さらっと調べてみたところ、富裕で家族にも恵まれていたヨブが、サタンの入れ知恵により、様々な苦難を与えられて、神への信仰心を試されるというヘヴィな話だった。
「ほかの人から提案されたタイトルだけど、俺の音楽に対する姿勢と通ずるところがあると思って、賛成した」とリッチー。ヨブは、財産を没収されても、皮膚病に冒されても神への信仰を失わず、最後は冨と長寿を手にする。その「最後まで信じ抜く姿勢」に、共感するらしい。

RICHIE SPICE
GIDEON BOOT
GIDEON BOOT

VP RECORDS / VP1809 / 2008

IN THE STREET TO AFRICA
IN THE STREET TO AFRICA

VP RECORDS / VP1748 / CD+DVD / 2007

SPICE IN YOUR LIFE
SPICE IN YOUR LIFE

VP RECORDS / VPFE1738 / 2006

BOOK OF JOB
BOOK OF JOB

VP RECORDS / VP1905 / 2011

01. BETTER TOMORROW
02. MY LIFE
03. CONFIRMATION
04. MOTHER OF CREATION
05. BLACK WOMAN
06. SERIOUS WOMAN
07. SOOTHING SOUND
08. LEGAL
09. YAP YAP
10. FIND JAH
11. JAH NEVER LET US DOWN
12. FATHER

▲PRODUCERS
01/02/03/04/08/11/12→DONOVAN GERMAIN/PENTHOUSE 05→RAGING FYAH 06/07→SHANE BROWN/JUKE BOXX 09→LENKY/40/40 10→TROY McLEAN

Black Woman pvはこちらから
「Black Woman」PVはこちらから!

RICHIE SPICE:俺はずっとルーツ・ロック・レゲエを歌い続けてきて、その間に様々なタイプの音楽が出て来て、新しいアーティストが出て来て、という変化があったよね? 違うグルーヴ、違うムード、違うアティチュードが出て来ても俺は絶対に自分を変えない。そのあたりが、ヨブの記と重なるんだよ。


 タイトルこそ堅いが、音の方はまさに「ナイス・ヴァイブス」が溢れている。いい意味で肩の力が抜け、ここまで伸び伸びと歌っているリッチー・スパイスは新鮮だし、耳を傾けているうちに、こちらの気分も上がる。今回、プロダクションの面で支えたのが、大御所プロデューサー、ペントハウスのドノヴァン・ジャーメイン。12曲中、7曲を手がけている。前作『GIDEON BOOTS』は、これまた大御所のボビー・デジタルの全面プロデュースだった。大御所との仕事が続いている理由を尋ねた。

R:とくに狙ったわけじゃないんだよ。少ないプロデューサーと組んでアルバムを作ると、その作品にエクスクルーシヴな雰囲気ができるのは分かっているけれど。今回は俺の会社、バナーコーナーストーン・ミュージックとジャーメインが両方で作ることに同意して取り組んだ。プロジェクトとして曲を録り溜めているのがアルバムになった形だね。彼は業界に長くいるから、ペースの取り方も分かっているし、いいヴァイブで仕事をできたと思う。


 そのほかには、ビジー・シグナルのマネージャーでもあるシェーン・ブラウンや、レンキーが参加している。シェーン・ブラウンは、現在の推し曲、「Soothing Sound」も担当。

R:彼はいろんな曲を作れるタイプのプロデューサーだよ。「Grooving My Girl」のレコーディングに参加してもらって以来だから、彼との付き合いは長いね。シェーンはジャーメインとも親しいから、ファミリー・ビジネスって感じだった。


 「Grooving My Girl」は隠れた名作であるデビュー・アルバムに収録され、サード・アルバムの『IN THE STREET TO AFRICA』に再収録された彼の代表曲だ。音楽性も一貫しているなら、人付き合いも長く続けるタイプのようで、ジャマイカでは昨年にヒットし、あちこちに飛び火している最中の「Black Woman」を手がけたレイジング・ファイアー・プロダクションについて尋ねたら、「彼らは若手のプロデューサー・チームで、その中のひとりが元々、俺のバンドでキーボードを弾いていた人だよ。デマールという名前だ」との答えが返ってきた。「Soothing Sound」に話を戻そう。音楽としてのレゲエのよさを歌った曲で、合間にファンに話しかけられたときの台詞が入っており、面白い。どこからインスピレーションを得たのだろうか。

R:リリックを書くときはあまり考えすぎないようにしている。自然に感じたヴァイブを形にしていくというか。あれは俺の日常のひとこまを切り取っているところがおもしろいかもね。俺も気に入っている曲だ。


 筆者のお気に入りはレンキーが作った「Yap Yap」だと伝えたら、「そうなの?」と本気で驚いた様子で、こちらは思わず失笑。こういう正直な反応をするのも、リッチー・スパイスらしい。彼にしてはテンポの速い曲なので、レコーディングは大変だったかと聞いたら、「いや、リッチーはリディムに乗って歌うこともできるから、難しくはなかった」と、少しふざけて3人称で答えてきた。スティーリー(R.I.P)&クリーヴィーのクリーヴランド・ブラウニーがドラムを叩き、グレン・ブラウニーがベースを弾くなど、大物ミュージシャンが参加しているのだが、「あの曲はまず、レンキーが組んだドラムとベースだけのトラックでまず歌って、それから彼がパーカッションやキーボードとかほかの楽器の音を足していったんだ」との解説があって、びっくり。レンキーのミュージシャン・シップはひと味違う、と常々思っていたのだが、唐突に入るジャズ・ピアノなど、それを証明するかのようなトラックなので、ぜひチェックされたし。


 最近になってリッチー・スパイスを知った人のために補足すると、彼の実兄は、チャカ・ディマス&プライヤーズのプライヤーズ(ファースト・アルバムはプライヤーズの全面プロデュース)と、90年代半ばに人気を博したスパナ・バナーである。今作の最後を締めるのが、彼らの父に捧げた「Father」だ。

R:母親に対する思いを歌った曲は多いけれど、みんな父親のことは歌わないから、そういう曲を作ってもいいかな、って思ったんだ。俺は、亡くなった父親と近かったし。


 ワンドロップ・ブームの金字塔となった06年『SPICE IN YOUR LIFE』と、「Youth Dem Cold」や「Brown Skin」などヒット曲を収録した07年『IN THE STREET TO AFRICA』をリリースした後、ともに有名になったフィフス・エレメント・レコーズから独立、文字通りファミリー・ビジネスをベースに活動を続けている。その間、彼の成功に嫉妬した元レーベル・メイトに公にディスられるなど―もっとも、リッチーの人の良さは有名なので、相手がバカを見た結果になったのだが―、温厚な彼にも紆余曲折はあった。今の状況について尋ねところ、「自分のキャリアにあったことは全部感謝しているし、いまの状況にも満足しているね」との答え。


 どんなときにでも感謝の念を忘れず、ポジティヴな曲を作り続ける。言うのは簡単だけれど、凡人にはなかなか到達できない境地だろう。「ナイス・ヴァイブス」と繰り返し口にした、リッチー・スパイスの5作目『BOOK OF JOB』から、気持ちが軽くなるような、セラピューティックな波動を感じられるとしたら、それは、送り手の心の有り様から出ていると思っていい。リッチー・ファンはもちろん、少しゆったりしたい人にも自信を持って勧められるアルバムだ。


RICHIE SPICE / BOOK OF JOB

interview & text by:池城美菜子
http://reggaeblog.dtiblog.com/



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