DUANE STEPHENSON特集

 07年のデビュー・アルバム『FROM AUGUST TOWN』でシーンに登場したDUANE STEPHENSON。“歌もの職人”として知られるDEAN FRASERがプロデューサーだったとは言え、無名新人のデビュー作ということで、当初は注目度も極めて低かったです。ただ、その歌声と何よりも極上のメロディ・センスは次第に話題となり、リリースから時間が経つに連れてセールスは伸び続け、幾多の店頭でも遅れた展開が積極的に実施されるなどして、現在では「ロング・セールス作品」へと見事に成長しました。特にレゲエ・ファン以外からの支持が強いのも特徴だったりします。

 そのDUANE STEPHENSONが3年振りとなる待望の新作『BLACK GOLD』をリリースします。プロデューサーは今作もDEAN FRASER。期待は高まりますが、新作はその期待通りにあの「ルーツでスウィートな哀切号泣美曲集」となって登場しました。是非確認してもらいたいところ。

 で、改めてDUANE STEPHENSONにその経歴を確認すべく、また新作『BLACK GOLD』について語ってもらうべく、直接電話インタヴューを敢行してみました。それをココに一挙掲載。是非、作品と本人の理解の手助けとして頂けば幸いです。

DUANE STEPHENSON

BLACK GOLD / DUANE STEPHENSON
BLACK GOLD / DUANE STEPHENSON

VP RECORDS / VP1897 / IMPORTS

01. NAH PLAY
02. FIRE IN ME
03. TRUTH IS
04. DECEPTION
05. SUFFERER'S HEIGHTS (ROCKER'S VERSION)
06. WOMAN
07. BLACK GOLD
08. JAH WORKS
09. RESCUE ME feat. GRAMPS MORGAN
10. STAY AT HOME feat. QUEEN IFRICA
11. MORE
12. CYCLE GOES ON
13. WHEN WE RISE feat. RAS SHILOH
14. MEMBERS ONLY
15. SUFFERER'S HEIGHTS (BALLAD VERSION)

DUANE STEPHENSON:Q改めて経歴を確認させて下さい。前作のデビュー・アルバムのタイトルが『FROM AUGUST TOWN』だった通り、ジャマイカのオーガスト・タウン出身なんですよね?

DUANE STEPHENSON:そう。オーガスト・タウンの出身で、現在もベースはオーガスト・タウン。色々と出掛けたりするし、キングストンとかの時間も長いけど、基本はココだよ。


DUANE STEPHENSON:Qアーティストに至った経緯を教えてもらっていいですか?

D:親戚の叔父さんがRIDDIM KINGSのメンバーだったんだ。RIDDIM KINGSはバンドで、GEGORY ISSACSとかのバックやたくさんのショーやアーティストのツアーに参加していたんだけど、子供の時からその叔父さんにくっ付いてリハーサルやショーとかを見ていたんだ。それで自然と音楽に魅了されていった感じだったね。なにか具体的なきっかけがあったわけではなく、自然ななりゆきだったね。で、16才でオーガスト・タウンにあった学校に入ったんだけど、そこではクラブ活動みたいに音楽だけでなく、芝居とかダンスとか色々と盛んだったんだけど、そこで知り合った友達とTO-ISISという6人組グループを組んでリード・ヴォーカルになったんだ。

 リード・ヴォーカルになった理由? それは「なりたかったから」としか言えないな。ギターや他の楽器も演るけど、歌うことが好きだったんだ。 PETER TOSHとか、JIMMY CLIFFが好きだったし、あとLUCKY DUBEも好きだったんだ。うん、LUCKY DUBEはアフリカのアーティストだけど、ジャマイカでも人気あるよ。ジャマイカでショーもやってたはずだし(91年「レゲエ・サンスプラッシュ」等に参加)。そういうルーツなんだけど、オリジナリティを持ったシンガーに憧れたんだ。

 家族にもラスタが居たけど、自分がラスタとなったのは自分の意志だね。その教義が伝える「正しい生き方」、愛をもって生きるとか、暴力とかアングリー・ビジネスとかを否定するとか、ポジティヴな姿勢で生きることを教えてくれる部分に共感したんだ。

 TO-ISISとして9年間活動してた。そんなに有名だったりしたわけではないけど、『FROM AUGUST TOWN』の一曲目の「Getto Pain」はTO-ISIS時代のヒット曲だよ。


DUANE STEPHENSON:Q07年の『FROM AUGUST TOWN』がデビュー・アルバムとなって、それはDEAN FRASERのプロデュース作で、以前にDEANと話した際に、彼があなたの才能を知って、ソロ・シンガーとしてデビューすることを勧め、その手助けをした、と語っていましたが、そのあたりはどうでしょう?

DEAN FRASER
DEAN FRASER
CANNON

FROM AUGUST TOWN FROM AUGUST TOWN / DUANE STEPHENSON
VP RECORDS / VP2347 / IMPORTS

D:それはちょっと違うかな。TO-ISISを離れたのは9年も活動していて、新しい段階に進むことを考える時期になったからなんだ。脱退とか解散ではなくて、メンバーとは現在も交流していて、また何かの機会に一緒に演る時もあると思っている。DEANのコトはもともと子供の時から知っているんだ。叔父さんのリハーサルとかショーとかで何回も会ってたりしたからね。で、ある時にDEANがインタヴューで「新しい才能と出会いたい」と発言していたのを見て、自分から連絡してみて、直接会いに行ったんだ。そこで曲を聞いてもらったりして、気に入ってもらって一緒に演ることにしたんだ。


DUANE STEPHENSON:Qあと、DEANは「DUANEは天才で自分が何かを教える必要は何も無かった」と語っていましたが、そのあたりはどうでしょう?

D:いや、たくさん教えてもらったよ。DEANは気付いてないだけで、DEANがLUCIANOのバンド・リーダーとして、またヴォーカル指導者として働いていた時に、僕はそれをずっと見ていたんだ。それで自分は色々と学んだんだ。間接的にDEANから歌うことも、アレンジも、曲作りとかも全て見て学んだんだ。プロデューサーであると同時に音楽の父親的な存在さ。ジャマイカのアーティストは、あとスタジオのエンジニアとかも、ココではみんな見て学ぶんだ。知りたいことはそうして知っていく感じだね。それを自分のスタイルに応用して変えていくことが大切で、全部を人から授けてもらおうとしてはダメなんだ。


DUANE STEPHENSON:Q『FROM AUGUST TOWN』はあなたのシンガーとしての魅力だけでなく、他とは全く違う曲調、とてもメロディアスで、メローで、レゲエの枠にとどまらない表現力を伝えて、多くのファンを魅了しました。

D:事前にヒットもなかったし、有名でもなかったのに、自分が思っていた以上に聴かれて、特に海外でも評価されたり、自分の存在が知られることになって、色々な意味で置かれる環境も変わったね」。

DUANE STEPHENSON

D:曲を作る上で自分が意識していること? まず歌詞については自分の身近で起きていることがテーマとなることが多い。ただ、自分はテレビやサイトで色々と伝えられているニュースがあっても、それをそのままに受け取らないタイプだ。常に物事には二つの面が存在していると思っていて、その伝えられない側を知りたいと思う。それを知ろうとすることがさらに自分の知識を増やすことにもつながるし、知識が自分の経験に幅を持たせることにもなると思う。知識と経験こそが自分を成長させてくれる武器だと思うし、財産だとも思う。だから、そうした自分の考えた方の中で、頭に幾つも浮かぶスクラップのような知識とかを集めて、それを歌詞やメッセージに構成していくことにしている。様々な知識を一つにすること、一つのことでそれ以上のことを伝えるようにすることで楽曲はより厚みを持ったものになるとも思っている。

 ただ、それだけではシリアス過ぎたり、ダーク過ぎるものになりがちで、自分はそのバランスは大切にしている。基本として自分が伝えたいのはコンシャスで、ボジティヴで憂うことがあったとしても希望を込めていきたいと思っている。今日を生きるための希望、明日への希望、次の時代への希望、それは大切にしているし、音楽が伝えられる特別なものと思っている。だから、特にアルバムを作る際には、メッセージを込めたエデュケーション的な曲と、ラヴ・ソングとかエンターテイメント的な曲をどちらも収録することを意識している。

 メロディは自分の頭の中で浮かんだものを基にしている。基本としてオリジナル・リディムが好きだ。決してリディムの使い回しとかを否定しているのではなくて、自分の頭に浮かんだメロディはパーソナルで自分だけのオリジナルなものだ、それを曲として完成させるのには他で別のイメージが付いているリディムに乗せることは適切ではないんだ。自分が表現したいのは、自分個人の世界観だったり、オリジナリティのある音楽であるから、それを重視したいんだ。特にアルバムは自分名義でリリースされるから、そうした部分は大切にしたいと思う。勿論、全てそうではなくて、適切なバランスというものもあるけどね。


DUANE STEPHENSON:Q新作『BLACK GOLD』についてですけど、コンセプト等はありますか?

QUEEN IFRICA
QUEEN IFRICA

DENNIS BROWN AT JOE GIBBS DENNIS BROWN AT JOE GIBBS
GREENSLEEVES / GRE2085 / IMPORTS / 4CD / OCT.25 OUT

REGGAE ANTHOLOGY-CROWN PRINCE OF REGGAE REGGAE ANTHOLOGY-CROWN PRINCE OF REGGAE
VP RECORDS / VP4145 / IMPORTS / 2CD+DVD / NOV.16 OUT

↑「Stay At Home feat.QUEEN IFRICA」の元曲となっている「Ghetto Girl」収録の2枚。

D:BLACK GOLD』というタイトルだけど、これは同名のチューンもアルバムに収録されているけど、これは元々は「石油」のコトを意味する言葉で、ニュースとかを通じて常に気になっていた言葉だったんだ。自然からの恩恵を奪い合い、金も生むけど争いも生むという二面性の意味を持っているとか、「BLACK」は「人々」を表していて、「GOLD」は「知識」を表しているのではないか、とか、まぁ、とにかく色々とまた考えたんだ。で、それに基づいて「Black Gold」という曲を作ったりもしたけど、同時にそうした自分の中に存在している様々な思考が詰まったものという意味で、それをそのままアルバム・タイトルにすることにもしたんだ。

 制作は1年半前から。ただ『FROM AUGUST TOWN』のプロモーションとかショーで世界中をあちこちと回ったりとかしていたから、アルバムとすることを想定して時間を掛けて、一曲ずつ作っていった感じだった。DEANが今回もプロデューサーを務めてくれたけど、現場責任者という立場で、自分と話し合って全体像を組み立ててもらった感じだった。だから、その二人の判断で、DEANと自分だけではなく、 今回は〈NO DOUBT〉のKEMAR McGREGOR(#13曲目)や、〈BIRCHILL〉のCHRSITOPHER BIRCH(#1&2曲目)にもプロデュースしてもらっている。

 『FROM AUGUST TOWN』の『パート2』を作るつもりはなかった。前作を出したことによって、色々と新しいものを見たり、触れたり、知ったりしたことで、自分が吸収したものを積極的に取り入れることに努めた。前作からのルーツでメロディアスな部分は踏襲していると思う、そこは自分のスタイルとして。ただ、歌詞や表現の部分では前作よりも成長してワイドになった自分を表現することに努めた。それで前作と違う聴こえ方が出来たり、また新たに自分を知ってもらえることを期待もしている。自分の前進している部分は伝えられていると思っている。

 ゲストは全部自分のアイディアだ。QUEEN IFRICAとの曲(#10)はDENNIS BROWNがオリジナル(「Ghetto Girl」)で、アルバムとしてのエンターテイメントな部分を打ち出したくて演った曲だ。彼女の持つタフなジャマイカ女性のイメージを大切にした。RAS SHILOHとの曲はもともとは自分一人で歌っていたんだけど、もう一つ違う要素を取り入れることで広がりが出ると考えて彼に依頼した。自分は全部を自分のものにするタイプではない。作る楽曲にとって一番良くなることを考えて、フューチャリング・アーティストが目立ったとしても、それが自分の曲として最善であればそれを選択するんだ。GRAMPSとの曲(#9)では、GRAMPSはもっとシリアスにしたがったてたし、意見もブツかったけど、自分のアルバムに入れることを考えて、そのコンセプトとアイディアを説明して、理解してもらった上で一緒に演った。結果としてその話し合いは最高の結果を生んだと思っているよ。全ては音楽のため、自分の表現のため、それだけはいつも大切にしているよ。


DUANE STEPHENSON:Q今後の活動、ジャマイカでの活動について教えて下さい。

D:このアルバムを持って、また色々な国や街でプロモーションに回りたいと思っている。色々とまた知ったり、知りたいと思っている。うん、自分は「I know」と何もかもを知ったフリして生きることよりも、「I want to know」と知ることを大切にしたいタイプなんだ。さっきも言ったけど、知ることと経験だけが自分を成長させるし、それが自分の音楽を成長させると思っているからね。

DUANE STEPHENSON

D:ジャマイカでは自分のような音楽はなかなか伝わらない部分もある。自分の国よりも他の国で流れているのも妙な話だけど、実際ジャマイカのラジオとかは業界政治が強過ぎて、音楽よりもハイプを流したがる。それは流れている音楽やアーティストが悪いのではなくて、娯楽に乏しくて刺激を欲しがる人達が居て、それを相手に業界のビジネスも回っているから致し方ない部分もある。ただ、それでも自分の曲や存在もジャマイカでは着実に広まってきている。確かにまだトップ・スターとかそういう立場ではないけど、聴いてくれたり、期待してくれている人もいるし、ラジオでも以前よりは流れているし、ビデオ・クリップはラジオ以上に流れている。もっと活躍していきたいし、頑張っていきたいね。ジャマイカには自分みたいにオリジナルで、ダンスホールとは違うレゲエを演っている素晴らしいアーティストがたくさん居ることを日本の人達にも知ってもらいたい。うん、ラジオのチャートだけをそのままに受け止めないで、是非、それ以外にもたくさんある素晴らしいジャマイカの音楽の存在を知ってもらいたい。うん、二面性だね(笑)。あと、そうやって知ることを楽しんでもらいたいね。 自分も出来れば日本にプロモーションに行きたい。色々と伝え聞いている日本を直接見て、また新しいことを知りたいんだ。



INTERVIEW & TEXT BY: 八幡浩司 / 24×7 RECORDS



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