BAY-C FROM T.O.K. Presents
BOMBRUSH HOUR 2009年4月22日・日本先行発売 VICTOR ENTERTAINMENT / VICP64688 定価¥2,625(税込) 解説/歌詞・対訳:池城美菜子 01. Wave / Bay-C(T.O.K.),Sami T(Mighty Crown),Tony Matterhorn,Cutty(Coppershot) 02. Trapped / Beenie Man feat. T.O.K. 03. Around the World / Machel Montano feat. T.O.K., Zan 04. Ebony Eyes / Flexx & Alex from T.O.K. 05. Shoulda Neve / Alaine 06. Big Boss / Bay-C & Craig-T from T.O.K. 07. Naw Go Run / Bounty Killer 08. Middle Day / Vybz Kartel feat. Jahvinci 09. It's Burning / Alozade feat. Baby Pink 10. Over Yah / Assassin feat. Spragga Benz 11. From a Place / Sleepy Hallowtip 12. Dark Side / Craig-T(T.O.K.) feat. Kunley(Ward 21) 13. Superman / Alex feat. Bay-C 14. Not Missing You / Flexx from T.O.K. 15. Jewel of the Nile / T.O.K. 16. Sunshine / Bay-C feat. Irie Love えー、ダラダラ企画の『JUST MY IMAGINATION』ですが、なんやかんやで10回目。今回のテーマはBAY-C。ええ、T.O.K.のメンバーで、一番低音のDJ。彼が自身のプロデュース・アルバム『BOMBRUSH HOUR』を4月22日に日本先行でビクターさんからリリースするということで、取り上げたい感じ。 まっ、直接ウチのリリースとか仕事に関係しているわけではないですけど、T.O.K.のメンバーですし、知らん関係でも無いBAY-Cなので、是非ご紹介したいと思った次第。とりあえず、電話をして話を聞いてみました。えー、いってみましょー。 ■まず最初に、今回自分でプロデュースしたアルバムをリリースしようと考えた理由は何ですか? 「まっ、T.O.K.は知られているし、自分もそのメンバーとしても、DJとしても知られているんだけど、そうした部分だけでは無く、より自分の音楽の世界を表現してみようと思ったんだよ。自分の音楽の世界観が詰まったものとして、一枚のアルバムとして届けてみようと考えたんだ。だから、コンピレーションのように思われるかもしれないけど、単純にそうでは無く、プロデューサーとしてのアルバムなんだ。あと、プロデューサーやレーベルが中心となっていると、リディム・アルバムとか、同じリディムが何度も出てくるものが多いんだけど、コレはそういうものとは違う作りになっている。曲ごとに違うリディムになっているんだ」 ■今回からプロデュース業を始めたんではないですよね? 「BOUNTY KILLERの「Which One」(02年『BOUNTY KILLER / ART OF WAR / VICP-61869』収録)とかもプロデュースしたし、03年には〈BOMBRUSH〉レーベルを立ち上げて、本格的プロデュースやアーティスト育成とかを始めた。ASSASSINの「Wondering Mind」(05年『ASSASSIN / INFILTRATION / VP1731』収録)もプロデュースしたし、T.O.K.の活動と並行して続けてきた感じだね」(注: 実際には01年から〈BOMBRUSH〉はリリースしていますね)
『BOUNTY KILLER /ART OF WAR』02年
『ASSASSIN /INFILTRATION』05年 『SPRAGGA BENZ /LIVE GOOD』07年 『VYBZ KARTEL /THE TEACHER'S BACK』08年 ■プロデューサーには、自分でリディムからエンジニアまで全てをやるタイプと、ミュージシャンやエンジニアに依頼して制作するタイプと分かれますけど、BAY-Cはどっちなんですか? 「全部自分でやるタイプ。基本的にね。うん、プロツールズとか、色々な機材を使って、自分でリディムを作っている。機材の使い方とかは、RICHARD BROWNEとか、DON CORLEONとかに教えてもらったりしたよ。ただ、エンジニアとしてはまだまだなレベルだから、RICHARD BROWNEとかDJ KALEEMとかに手伝ってもらうかな。彼らの横に座って、自分のイメージ通りに仕上げてもらうんだよ」 ■リディムを作る時のヒントとかイメージはどこから湧くものですか? 「まっ、簡単に言えば『ヴァイブス』ってことなんだろうけど、自分自身がDJだから、『歌い易い』とか、『歌ってみたい』と思うものを自然と作っていると思うよ。そうそう、アーティスト目線で作っているね。T.O.K.での経験が活かされているとも言えるし。今回の作品のリディムもそういう感じで作ったし、歌ってもらうアーティストをイメージして作ったね。だから、アーティスト達もやり易かったと思うよ。リディムを渡してから、時間は掛からないで曲を仕上げて来たし、レコーディングも全て上手くいったね。ASSASSINとかは、リディムを聴いて、さらに自分からアイディアを出してきたんだよね。彼がSPRAGGA BENZにアイディアを伝えて、コンビネーション・チューンにすることにしたんだ。それまでSPRAGGA BENZとはそんなには親しくはなかったんだけど、自分のリディムがASSASSINのクリエイティヴィティを刺激して、それでSPRAGGA BENZともリンク出来ていったという、そういう発展的な展開もあったりしたのも素晴らしかったね。他の曲でも、歌入れとかしている時にアーティスト達とアイディアを出し合ったり、まっ、自分が歌う側のコトも理解しているから、より適確なコトを言えたりもするし、密接なコミュニケーションで良いヴァイブスで作れたね」 ■参加したアーティスト達の選考基準みたいなのはあるんですか? 「やりたいアーティストとやる、というのは他のプロデューサー達と同じだと思う。だけど、事前に自分のこうした動きを話していると、みんな『やろうぜ』とか言ってくれてたし、やりたがってくれてたから、すごくやり易かったね。プロデューサーの視点として考えたのは、他のプロデューサーではあまり表現してないアーティストの魅力を引き出そうということ。T.O.K.として色々なプロデューサーと仕事すると、当たり前だけど、プロデューサーごとに違った表現をされるんだけど、自分は他のプロデューサーが表現したことのないアーティストの魅力を出してみようと努めたよ。例えば、VYBZ KARTELには2つのリディムを用意したんだけど、彼が選んだのは、どちらかと言うとSTEPHEN McGREGORっぽいリディムだった。まっ、よく一緒に仕事しているだろうし、それに慣れてるんだろうからね。それは予想通りだった。だから、『やっぱりな』と思いつつ、それをいかにSTEPHEN McGREGORとかと違うものにしてみせるか、違うVYBZ KARTELを表現するかに努めたんだ。そういうやり方で、各アーティスト達と取り組んだね」
■なるほど。では、BAY-C / SAMI-T (MIGHTY CROWN) / TONY MATTERHORN / CUTTY (COPPERSHOT)との「Wave」はどうやって作ったんですか? 「アハハ、これは偶然というか、これこそヴァイブス・ソングだよ。SAMI-Tがジャマイカに居る時に、彼とリンクする必要があって、行ったのがCOPPERSHOTのスタジオだったんだ。そこで、この曲のリディムをプレーしてたら、SAMI-Tは『良いね』とか言ってくれてて、そこに居合わせたCUTTYも反応して、その場で『Wave〜』ってやり出したんだ。で、それを聴いたSAMI-Tも『日本とかで人気出そうだ』とか言い出して、そのまま『録ろうぜ』ってなって、さらに偶然その場に居たTONY MATTERHORNも参加することになったんだ。自分はプロデューサーとして、彼らの曲を録ろうとしたら、3人が『お前はDJだろ、お前も歌え』って言い出して、§?なんかその流れで自分も参加しちゃうことになったんだ。うん、ホントにその場の雰囲気、ヴァイブスで出来ちゃった曲だよ。先のASSASSINとSPRAGGA BENZのもそうだけど、こういうマジックみたいなものがレゲエではよくあるけど、単に偶然だけじゃなくて、仲間同士の関係とかがあって生まれるもんだから、無理にやろうと思っても出来るもんじゃないよね」 ■なるほど。あと、T.O.K.のシンガー2人、FLEXXとALEXの曲もスウィートで良い感じですね。「I Believe」路線というか、お得意な感じで。 「これはカヴァーだね。RICK JAMESとSMOKEY ROBINSONの曲だよ。FLEXXとALEXなら、それぞれのイメージにピッタリとハマると思って、自分からアイディアを出した。で、この曲は自分でリディムを作っていないんだ。と言うか、自分の作りたいイメージで仕上げるのにピッタリな人に作ってもらうことを選択した。MAD SCIENTIST(MARIO LAWRENCE)に作ってもらった。そうした適材適所な人選をするのも、プロデューサーの大切な仕事だと考えるからね」 ■ふむふむ。ところで、正直なところ、BAY-Cが自分でリディムを作ったり、プロデュースしてたのって、そんなに知らなかったんですけど、変な質問ですけど、「だったら全部自分で作って、自分で歌って、ソロ・アルバムにしよー」とかは思わなかったんですか?
「アハハ、それはないよ。そういう考えは自分にはない。自分が『前に前に』っていくタイプでもないし、なによりも『まずはT.O.K.のメンバーだ』という自覚も意識もあるしね。あと、今回は色々なアーティスト達を起用することで、自分の世界観を伝えることにしてみたかったんだ。他のアーティスト達に参加してもらうことで、表現出来るものもあるからね。まっ、今回は『JOURNEY OF BAY-C'S MUSICAL WORLD』って感じで、アルバムを通して自分の音楽観を伝えて、リスナーにはその世界を旅して、楽しんでもらいたい感じなんだよね」 ■なるほど。ところで、T.O.K.の他のメンバーはこうしたBAY-Cの活動をどう見てるんでしょう?
「まず、なによりも協力的ってことだね。全員が参加してくれているのもそうだし、この作業のために自分が動く時間を作ってくれたりもしたよ。VYBZ KARTELの歌録りの時は、T.O.K.のインタヴューの仕事が入っていたんだけど、他の3人が『俺達で何とかするから、お前はスタジオに行けよ』って言ってくれたりして、色々な部分でサポートしてくれたんだ。昨年にFLEXXがリリースした『D' LINK』っていう彼のプロデュース・アルバムの時も、全員で協力したし、自分もプロモーションしたけど、今回もそういう感じだね。他のメンバーが何かする時は全員で協力するっていうのは、暗黙の了解となっているよ」 ■で、T.O.K.と言えば、新作が登場する噂ですけど・・。
「うん、リリースする。ちょうど出来たところだよ。ホットなアルバムになっているから期待して欲しいね。6月に日本に行くけど、その時までにリリース出来たらと思っている。今回は必ずリリースする。あと、これだけは書いて欲しいんだけど、日本のファンに改めて『アリガトウ』と言いたい。いつも温かく、長いサポートに感謝している。この自分の作品も、T.O.K.の新作もそうしたファンのみんなに喜んでもらえるものと思っている。楽しんでもらえたらと思っているし、また日本で会えることを楽しみにしているよ」 ■あー、ちょっと違う話していも良いですか? プロデューサーとアーティストの話をしたから思ったんですけど、例えばT.O.K.で色々と各プロデューサー達からリディムを渡されて「歌ってくれ」と言われる時に、何を基準に「やる」「やらない」と決めてます? 「まずはリディムの質だね。『Quallity than Quantities」で、リリースする数よりもリリースするものの質を重視しているね。あと、そのリディムが既にリリースをされているものだったら、その状況を見たりもするし、他のアーティスト達が歌ったものを聴いて、『自分達ならどう違う表現をするか?、どう表現したいか?』とも考えるね。先に出てる曲よりも良い曲にしたいし、二番煎じはやりたくないしね。まぁ、でも、とにかく質だよ。何でも歌えば良いってもんじゃないし、良くない曲は出したくないからね。えっ? 断る時?、アハハ、それは確かに難しいよね。まぁ、変な業界の『政治』みたいなのに巻き込まれたり、敵対するのも嫌だしね。まっ、その時々でうまくやってるよ」 ■もう一つだけ、最近のジャマイカ・シーンについて話して下さい。
BAY-C 「最近は『MAVADO & VYBZ KARTEL』と思われてるんじゃないかな。実際に2人は人気もあるし、良いチューンもあるしね。現在のシーンはそうしたバッドマン達のイメージが強いだろうけど、それだけでは決して無いよね。まっ、バッドマン達のコトを騒ぐのは、そうしたハードコアを求める人達が多いからさ。ジャマイカはハードコアな国だからね。アーティストが『何万ドルを寄付した』というニュースよりも、『何グラムのガンジャで逮捕された』ってニュースの方が大きく扱われるし、残念なことにそうしたネガティヴな話題を好む人達も多いからね。でも、バッドマンばかりじゃないし、MAVADOもVYBZ KARTELもバッドマンだとしても、別に犯罪者ではないし、個人的には普通の人だと思っているよ。一部の情報とかイメージで全てを決定してしまうのは良くないね。みんなそうしたがるけど。『アイツはバットマン』とか言って、ネガティヴなものとして捉えたりとかね。まっ、だからT.O.K.も偏ったイメージに陥らないようにしている。バッドマン・チューンも、パーティー・チューンも、ラヴ・ソングも、メッセーシ・ソングもバランスよくやりたいと考えている。それは戦略ではなくて、自分達4人のパーソナリティなんだ。全員、色々な個性を持っているし、色々なコトに興味も関心もあるし、一つの表現スタイルでは収まらないからなんだ。全部がリアルであれば良いんだ。うん、ポイントはリアルだからね。で、そういう4人の個性とか、様々な違いとかが、幅広いクリエイティヴィティとか表現とかを生むことにつながっているし、より幅広い人達に支持されている理由だとも思っているよ。うん、そうそう、プロデューサーの視点で言えばね(笑)。そうした視点で『BOMBRUSH HOUR』も作ってるし、色々なアーティストが参加しているの理由でもあるんだよね」 ■色々とアリガト。また話しましょ。 「いやいや、こっちこそ。日本のみんなにさっきの感謝の言葉を伝えてくれよ、あと、6月に日本で会おうぜ。じゃーなー」 八幡浩司(24×7 RECORDS., INC.)
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