↓写真をクリックすると拡大表示します。 BITTY McLEAN

 えー、ダラダラ企画の『JUST MY IMAGINATION』ですが、今回のテーマはBITTY McLEAN。説明不要の04年の大傑作『ON BOND STREET』以来となる待望の新作『MOVIN' ON』が、3月25日に日本先行でビクターさんからリリースとなることはご存知かと思いますけど、その直前となる今月の頭に来日しましたことは「DAILY NEWS」とかでもお伝えしている通り。

 今回で2回目の来日。前回は06年の『愛知・REGGAE X-POSION』の時。で、今回は前回と異なってバンドと共に、と言うか新作『MOVIN' ON』と同じく、あのSLY & ROBBIE with TAXI GANGというエクセレントな組み合わせで来日。東京・コットン・クラブ、横浜モーション・ブルーで6日間で全12回公演を行いました。

 で、前回の愛知の公演の際に、チラッと挨拶したんですけど、「ちゃんと話を聞いてみてぇ」と思っていたら、『MOVIN' ON』をリリースするビクターさんのA&Rさんがそんな時間を設けてくれました。ラッキー&ナフ・リスペクト。まっ、直接ウチのリリースとか仕事に関係しているわけではないですけど、個人的にも大ファンですし、良い話を聞かせてくれたので、是非ご紹介したいと思った次第。

 BITTY McLEANと会えたのは、3月5日のコットン・クラブ。公演直前の慌ただしい中で、時間を割いてくれました。BITTY McLEANには勿論、色々と心遣い頂いたビクターさん、ROLさん、コットン・クラブさんのご理解とご協力に大感謝を。えー、ではいってみましょ。BITTY McLEANのインタヴューです。

●えー、忙しいところ、なんかスイマセン。少し話を聞かせてもらいたくて・・、

BITTY McLEAN(以下B)「いやいや、全然平気だよ、喜んで」

●えー、今回は連日2公演ですし、空気も乾燥している時期なのですが、喉とかは平気ですか?

「確かにタフだよね(笑)。でも、平気だよ。なんとかやり切ってみせるよ(笑)」

●時間が無いので、色々と質問をさせて下さい。まずは改めてキャリアを教えてください。

「うん、歌を歌い出したのは80年代の終わりぐらいから。イギリスのバーミンガムのサウンド・システムで歌い始めた。10歳の頃から地元のコミュニティーの小さなサウンド・システムで歌い始めたのが、自分のキャリアの始まりと言えるかな。うん、色々なサウンド・システムで活動していたよ。それで自分の名前が次第に知られるようになったね。でも、ホントは歌うことよりも、エンジニアとかテクニカルなコトにもともとは興味が強かったんだ。だから、そうしたエンジニアリングとかを学ぶために2年間カレッジに通ったんだ。その後に、91年からUB40のスタジオでエンジニアとしての仕事を得ることになったんだ」

●ああ、「UB40のファミリー」と言われてましたけど、そうやってリンクが出来たんですね。

「うん、カレッジの先生がその仕事を紹介してくれてね。それが大きなターニング・ポイントになったね。それで働きつつも、UB40のALI CAMPBELL(メイン・ヴォーカル/昨年脱退)とかからアドヴァイスを受けつつ、自分でもデモを録るようになって、93年にファースト・シングル「It Keeps Rainin'」で正式にアーティストになったんだ。ALI CAMPBELLが最初にホワイト・レーベルでリリースしてくれて、UB40のスタッフがEMIにも売り込んでくれて、93年の『JUST TO LET YOU KNOW』で正式にデビューすることが出来たんだ」

●「It Keeps Rainin'」はイギリスを中心に大ヒットしましたし、大きな注目を集めたと思いますが、失礼を承知で言わせてもらえば、その後はしばらく名前を聞かなくなりました・・。

「いやいや、その通りなんだよね。その当時の最後のレコーディングは95年だったんだ。OTIS REDDINGをトリビュートした『RESPECT』というアルバムを出すプランがあったんだ。そのアルバムのためにジャマイカに行って、12曲もSLY & ROBBIEと録ったんだ。でも、残念なことにそれはリリースされなくて、かなり失望したんだ。なんて言うか、音楽業界にね。で、そこからはしばらくエンジニアとか、曲を書いて提供したり、若いアーティストをプロデュースしたりしてたんだ。でも、突然ハワイから連絡あって、『現地で自分が人気ある』って言われて、ハワイのコンピリーションに自分の曲を提供したり、4回ぐらいライヴもしに行ったりしてたし、そういう感じで、他にもイギリス以外から色々と評価されたり、呼ばれるようになって、また考え方が変わったんだ」

●と言うと?

「うん、だから、別に活動の場はイギリスだけじゃなくて、世界があるってことに気付いたんだ。それで良い曲をちゃんと作れば、それは世界に届くってね。イギリスの音楽業界は酷い状況だけど、それだけを意識しなくても構わないってね。僕の音楽は別に何百万枚も売れるものではないと思うよ、でも、それを求めてくれる人が居て、自分が届けたいものがあるなら、その出来る範囲の中でしっかりと続けることが大切なんだ。一回の大きなサクセスよりも、ずっと続けていけることの方が僕にとっては重要なんだ」

photo
↑写真をクリックすると拡大表示します。 BITTY McLEAN↑『JUST TO LET YOU KNOW』94年
BITTY McLEAN↑『ON BOND STREET』04年
BITTY McLEAN
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●素晴らしい考え方ですね・・、で、時間が無いので、サクサクと復活となった『ON BOND STREET』について聞かせて下さい。これは〈PECKINGS〉からのリリースで・・、

「うん、確かにリリースは〈PECKINGS〉だけど、僕自身も半分出資しているし、制作に関しては全部僕がやったんだ。最初は〈PECKINGS〉から色々と新しいリディムとかを提供されたんだけど、なんか歌ってみてもしっくりとこなくてね。それで、あの〈TREASURE ISLE〉のオリジナル・リディムを使うアイディアを出したんだ。それを自分のスタジオで録音したんだ。うん、素晴らしかったよ。あのSUPERSONICSの演奏に乗って歌えるんだからね」

●逆にそれがプレッシャーにはならなかったですか?

「勿論プレッシャーは感じたけど、それ以上にその素晴らしい演奏にどう自分が向き合うかに集中したよ。あと、自分がALTON ELLISとかになった気分と言うか、彼らならどう歌うかをイメージしてみたりしてね。少し話は飛ぶけど、『ON BOND STREET』を出した後に、今から2年前なんだけど、ALTON ELLISに話を聞けたことがあったんだ。ALTON ELLISは『リディムを聴いて感じることを大切にしろ』を言ってくれた。つまり『リディムを聴いて、自分が思い浮かべたイメージを大切にしろ。そのイメージに対して正直であれ。自分に嘘をついた歌を歌ってはいけない。自分であり続けろ。正義でいろ』ってね。その通りだと思うし、そう自分もあるべきだと思ってるんだ」

●うわっ、さすがALTON ELLISですね。めちゃくちゃ素晴らしいですね。えっと、どうも時間がもう無いみたいなので、一気に新作『MOVIN' ON』について聞かせて下さい。全編SLY & ROBBIEとの組み合わせで、前作以来ずっと、リリースの噂が流れていた作品ですよね?

「うん。実際にこの企画のアイディアが出て、レコーディングしたのは少し前だね。ただ、リリースを急がしたくはなかった。『ON BOND STREET』をしっかりと世界に届けておくのに必要な時間もあったし、スピード感が重視されるダンスホールと違って、歌ものに関してはそれに必要な時間もあると思うんだ。一度歌ってから、それを自分なりに熟成させると言うか、自分のものとすると言うか、正しいものが出来ているのかを冷静に判断して、やり直したり、歌詞を変えたりとかする時間も必要だと思うんだ。だから、リリースはあえて焦らなかったし、正しいタイミングを待ってたんだ」

photo BITTY McLEAN/MOVIN' ON
2009年3月25日・日本先行発売
VICTOR ENTERTAINMENT / VICP64670
定価¥2,625
解説:石川貴教 / 歌詞・対訳付

01. Games With Love
02. Got To Let Go
03. You're Welcome, Stop On By
04. So In Love
05. Lost Love
06. Try A Little Tenderness
07. Jahovia feat. Johnny Osbourne
08. Plead My Cause
09. For You I Won't Cry
10. The Real Thing
11. Come To Me
12. Daddy's Home
13. One Of A Kind
14. Lately
15. All That I Have*
16. Let Them Talk*
17. Movin Dub*
* Bonus Track for Japane

●今回はSLY & ROBBIEということで、往年の彼らの〈TAXI〉のリディムを全部使用するのかと思ったら、そうではなくて、新しく録ったリディムも多いですね。

「うん、前作が全部〈TREASURE ISLE〉で、新作が全部〈TAXI〉の人気リディムをそのまま使うというのは、もしかしたら分かり易いコトだったのかもしれないけど、そこには進化や成長は無いと感じたんだ。前作のイメージを踏襲して、〈TAXI〉のリディムを使いつつも、新しいものも加えることがこれまでのファンにとっても、また新しいファンを築いていくためにも良いと思ったんだ。それによって、よりBITTY McLEANをも正しく伝えられると思ったしね」

●SLY ROBBIEとの作業はいかがでしたか?

「ほら、さっき話したリリースされなかった『RESPECT』の時に一度一緒にやっているから、『よー、BITTY、またやろーぜ』な感じで、すんなりと作業に入れたよ。制作はジャマイカでリディムを、歌入れはイギリスの自分のスタジオでしたんだ。一番良いやり方と思ったからね。ジャマイカ? うーん、そんなに大きな違いとかは無かったかな。いや、あの時間感覚は確かにイギリスとかとは違ってたね(笑)。ジャマイカでの作業はなかなかはかどらないけど、やる時は一気に仕上げる感じだね。イギリスと比べるとレコーディングそのものに掛かる時間はかなり短かったね」

●カヴァーも多いですね。

「うん、カヴァーが好きと言うか、良い曲は歌いつなげていくべきだと考えてるんだ。今回もSTEVIE WONDER、OTIS REDDING、BOBBY WOMACK、LEROY HUDSONとかのカヴァーをやっている。自分よりも前の世代の歌が多いね。でも、良い曲はいつまでも良い曲で、それは次の世代に伝えていく必要があると思うんだ。クラシックなんて何百年も前の曲をずっと受け継いでいるし、ジャズとかもそうだよね。そういうのは大切なコトだと僕は思っているよ。そうやって良い曲は時代を超えていくべきだと思うし、歌う意味も存在していると思うよ」

●あっ、なんかもう時間みたいです。最後にイギリスのレゲエ・シーンについて教えてください。正直、以前よりもイギリスのレゲエ・アーティストのリリースも減り、情報も少なくなっている感じもするんですけど・・、

「うん、現在は以前と比べて元気が無いのは確かだよ。これまでと大きく違うのはサウンド・システムだね。色々な規制とかもあるし、政治な理由もあるんだけど、サウンド・システムが活発に活動出来る環境では無くなって、サウンド・システムを活動の場やデビューのきっかけとしてたアーティスト達も活動出来なくなりつつある。酷いもんだよ。そんなにラジオとかで頻繁にレゲエが流れるわけでもないし、サウンド・システムはそれに変わるレゲエのメディアの役割も担っていたんだけど、それが無くなるとレゲエがより人々から遠いものになってしまうし・・、曲もアーティストも知られないし・・、うん、現在はタフな状況と言えるだろうね」

●あっ、なんかもう終わらないとダメみたいです。公演の直前なのに時間を割いてくれて有り難うこざいました。

「いやいや、こちらこそ。この後のショーも楽しんで行ってね」

 えー、てな感じ。めちゃ好青年。めちゃイギリス英語な巻き舌。あと早口でお喋り君でした。短い時間でチト残念。でも、本人の活動に対する考え方とか、ALTON ELLISのくだりとか、カヴァーに対する考え方とか、なんか良い話だらけで、聞いててグッときましたな。現在の立ち位置を獲得するまでに苦労もしているので、説得力もたっぷり。アーティストとしてもだけど、なんか人としても信用できるな。

 で、お言葉に甘えて、そのままショーも観させて頂きました。約1時間でしたけど、『ON BOND STREET』からの曲ばかりで、新作からの曲を期待していただけになんか「えぇっっ?」と・・。「SLY & ROBBIEなのに〜」と思ったのは事実。同じ公演を観ていたMIGHTY CROWNのコージ君も「なんで〜」と言ってたな。

 ただ、それでも十分に素晴らしかった。十分以上に大満足。BITTY McLEANの歌声はハンパ無し。レコードとかの録音物と変わらんと言うか、それ以上に艶やかで伸びやかで、それに喰らいまくり。で、確かに〈TAXI〉のリディムをほとんどプレーしなかったSLY & ROBBIEでしたけど、それでも至近距離で観れた生演奏には感動。SLY DUNBARの手さばき、ROBBIE SHAKESPEARの指を観れただけで良かった。相変わらずルーディーで、ダースベイダーみたいなROBBIE SHAKESPEARの佇まいも良かった。ホントに素晴らしいショーでした。

 あと、会場に着いた時は、ちょうどSLY DUMBARが一人でドラムをセッティングしているところで、軽く叩いて音とかを確認しているかと思ったら、突然あのミリタント・ビートを叩き出して大感動。側で別の取材を受けていたBITTY McLEANから「お静かに!」と言われて、苦笑いして止めちゃったけど、もっと聴きたかったと言うか、観ていたかったな。

 えー、改めて、BITTY McLEANとご協力頂いた皆さんに大感謝です。きっと新作『MOVIN' ON』を聴く度に、この日のショーやBITTY McLEANの話とかを思い出すと思います。素晴らしい時間と素晴らしい作品に大感謝。

 そんな感じ。ではでは。

八幡浩司(24×7 RECORDS., INC.)

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