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24×7RECORDS NEWS | 2010 DECEMBER
12/15 update
01. 新作情報 - NO LIMIT / GHOST特集！〈第二弾〉
02. 新作情報 - NO LIMIT / GHOST特集！〈第三弾〉
03. 年末恒例／メール会員対象「プレゼント大会」実施決定！
ついに待望の最新作『NO LIMIT』が12月15日に日本先行で発売となりました！このスペシャル・コンテンツ／第三弾では発売を記念したスペシャル・インタヴューをアップ！！ NY在住の音楽ライター、池城美菜子さんによるエクスクルーシヴな内容、これを読めば『NO LIMIT』をより楽しんで聴けるハズ！ぜひ！
声はどこまでも高く、息はずっと長く。少年シンガー〜カヴァーを得意とするアイドル系美声シンガー〜オリジナルとカヴァーの両方がイケるヴェテラン・シンガーと年輪を重ねてきたゴーストが、最新アルバム『NO LIMIT』でビター・スウィートな世界を展開している。
「7才くらいからマイクを握って来た」と電話口のゴースト。
GHOST：俺が育った地域には歌がうまい子供が俺を含めて3人くらいいて、一緒にしょっちゅう歌っていたから、その辺りではちょっと有名だったんだ。それで、ストーン・ラヴやメトロ・メディアが来たときに、地元の人達が俺たちにも歌えってけしかけてきて。
同世代で8才でレコーディングを始めたビーニ・マンも子供の頃から知っていると言う。早熟なアーティストが多いレゲエ界においても、ピーター・メトロやタント・メトロが率いる人気サウンド、メトロ・メディアのダンスでマイクを奪いに行ったり、ココ・ティーのラヴァダブで前座（？）を務めたりした子供時代を送り、さらに現役で歌っている人はそれほど多くないはず。「ビーニ・マンよりヒットを早く出したのでは？」と確認したら、「まぁね」と笑った。
ジャマイカの人は一般に信心深く、迷信も多い。「ダッピー(Duppy)」と呼ばれる「お化け」も恐れられている。事故に遭ってついたあだ名とは言え、「ゴースト」を30年近くそれを名乗っているマイナスはないのだろうか。
G：うーん、俺の歌声にゴーストという名前は合っていると思う。それほど深く考えてつけたわけじゃないんだよね。確かにいろんなイメージがあるから、“ホーリー・ゴースト（聖霊）”や、“ソウル・ゴースト”に変えたら？って言われたこともあるけれど、まぁ、そこまでしなくていいかなって。ほら、おばけのキャスパーとか、かわいいお化けもいるじゃん？
中性的なハイトーン・ヴォイスが特徴だが、素顔のゴーストは「うちにもふたり、歌がうまい子供がいるけれど、学業優先にしているんだ」と話す、至って真っ当な一面を持つ。美声を保つ秘訣は、「吸いすぎないこと」とさらっと答えた。
『LOVE YOU』、『UNDER THE MOONLIGHT』など、00年代の彼の作品を好んで聴き込んできたファンにとっては、『NO LIMIT』はトリオロジーの完結作とも取れるだろう。相変わらず意表をつく選曲をしてから、様々な感情を歌声に乗せており、飽きさせない。ちなみに、レゲエ外のお気に入りのアーティストは、マイケル・ジャクソンを除くとセリーヌ・ディオンだとか。
G：彼女は大好きだ。どんなキーの曲が来ても完璧に歌うから。彼女がどんな曲を歌っていても、楽しんで聴いていられる。
90年代はVP RECORDSからアルバムを出していたが、前述の『LOVE YOU』と『UNDER THE MOONLIGHT』は、ブルックリンの45（シングル）専門ディストリビューター、〈ミュージック・アンバサダー〉からリリース。そこに至った経緯が面白い。
G：『LOVE YOU』を作ってレーベルを探しているとき、けっこうネガティヴな意見を耳にすることが多かったんだよね。業界全体の動向に合わない、みたいな。「Love You」や「Nothing At All」、「Do You Believe」もすでにヒットしていたのに、そういう反応なら、自分でやるかって気になったんだ。そうこうしているうちに、ブルックリンで45のディストリビューションをやっている白人がいるからって紹介されて。初めは“へぇー”って感じだったんだけど、とりあえず連絡を取ることにしたんだ。
〈ミュージック・アンバサダー〉のダン・カスター
サラーム・レミ
ここで、この電話インタヴューをセッティングしてくれた、〈ミュージック・アンバサダー〉のダン・カスターから、補足が入った。
G：紹介してくれたのはサラーム（・レミ）だよ。うちは45だけで、アルバムはやらないって説明しても、「この作品はいいから。売れるから」って押し切られて。それで、ゴースト自身が店まで来てくれて。ゴーストのシングルはうちが取り扱っていた分だけでもすごく人気があったし、うまく行きそうなのは分かっていたけれど、レーベルじゃなくてディストリビューターだしって断ったんだ。でも、結局は半強制的に出すことになった（笑）。
サラーム・レミはフージーズやナズのヒットから始まり、最近ではエイミー・ワインハウスの作品や『SEX & THE CITY』のサントラを手がけるプロデューサーだ。
「99年のことだから、サラームも今ほどは有名じゃなかったんだ」とゴースト。彼はみんなを繋ぐのが好きなタイプなんだよ」とも。10年を経て、〈ミュージック・アンバサダー〉本体はディストリビューターではなくなったが、『NO LIMIT』をまとめたのはゴーストとダンだから、人の縁とは分からないものである。
レゲエはカヴァー・ソング（ソング・オーヴァーともいう）が得意なジャンルだが、その中でもゴーストの選曲のセンスは変わっていて面白い。今回もマイケル・ジャクソン「The Girl Is Mine」から、ジェイソン・ムラーズ「I'm Yours」までを網羅し、アメリカとイギリスのポップ・シンガーの作品が目立つ。
「誰が歌っているかより、俺の心にどう響くか、訴えてくれるものがあるかが大事だ」とゴーストはいう。周りから勧められるケースも少なくなく、「I'm Yours」はブルックリンのセレクターで、45のレーベル〈Lover's Cover〉を主催しているボウ・パリシーのアイディアだそう。
GHOST / NO LIMIT
VICTOR ENTERTAINMENT
VICP-64913 / 解説:池城美菜子
国内先行12月15日発売
カヴァー曲の中で、筆者がおすすめなのは「Guilty」。「Saturday Night Fever」などでおなじみのビージーズのバリー・コブがアメリカの大エンターテイナー（美空ひばりと大原麗子と樹木希林を足して3で割ったような存在…よけい分からないかな）、バーブラ・ストライサンドのために作り、デュエットしたクラシックだ。ジャマイカの人々にも愛されている曲で、シェール「Believe」（※ゴーストは同曲を「Do You Believe」とタイトルを変えてカヴァー）以上に大胆な試みだろう。
ゴーストに、レゲエではなぜ、カヴァー・ソングが大事なのか、という大きな質問をぶつけてみた。
G：簡単に答えられるような質問じゃないけれど、俺の場合、「Killing Me Softly」を歌ったときから道が拓けたから、重要な要素だとは思っている。子供の頃からテンプテーションズの曲とかカヴァーして、まずそれで有名になった。オリジナルの曲も歌うようになったとき、最初、みんなが戸惑っているような印象を受けたのは混乱したよ。同じ国の人が自分の曲を歌っている方が好まれるだろうと思っていたからね。まぁ、ジャマイカ人特有の性質なのかもしれないけれど、スカの時代からこの国の人たちはカヴァーを好んでいて、スカからレゲエに移行したときもそれは変わらなかった。質問に対する答えは、神様くらいしか答えられないと思うけれど、俺に関して言えば、タイトルの『NO LIMIT』通り、シング・オーヴァーでもオリジナルでも限界を設けずに歌って行きたいと思っている。
タイトルに引っ掛けて、きれいにまとめてくれた。『NO LIMIT』が、きれいなメロディーときれいな声が詰まったレゲエ・アルバムに留まらず、こちらの気持ちのグッと深いところまで迫って来るのは、オリジナルでもカヴァー曲でもゴーストがリリックの言霊に乗り移り、一体化しているからだと思う。ゴーストはさらに凄いシンガーに化けた。それが、よく分かるアルバムだ。
interview & text by：池城美菜子
http://reggaeblog.dtiblog.com/
