HOME > VP RECORDS > NEWS > 2010/02
VP RECORDS NEWS | 2010 FEBRUARY
5/11 update
01. SANCHEZ is BACK!!! NEW ALBUM『NOW & FOREVER』!
02. VOLCANO『HENRY"JUNJO"LAWES - VOLCANO ERUPTION』!
"歌王"SANCHEZ!! 待望の新作登場!!
プロデュースはDONOVAN GERMAIN〈PENTHOUSE〉!!
NOW & FOREVER / SANCHEZ
VP1873 /US現地2月9日発売
VP RECORDSより、US現地2月9日にSANCHEZの最新作『NOW & FOREVER』が登場! VP RECORDSからは03年の『NO MORE HEARTACHES』以来となる、約7年振りの待望の新作! そして、その新作でSANCHEZとタッグを組んだのが、DONOVAN GERMAINの〈PENTHOUSE〉! ジャマイカの国宝級シンガーと、レゲエを代表する名プロデューサー&名門レーベルとの、まさに夢のタッグが遂に実現!「待ちに待った」とはこのコト!
「聴きたかった作品」が遂に到着です!
本名はKEVIN ANTHONY JACKSON。1964年生まれ。ジャマイカのストーニー・ヒルとウォーターハウスといったゲットー地域育ち。多くのレゲエ・アーティストと同様に、彼も6才から教会に通い、聖歌隊で歌い始めた。そして、13才になった時に最初の転機を迎えることに。
‡ 聖歌隊からサウンド・マンに〜 SANCHEZがその当時に通っていた教会では、日曜日の朝には通常のミサをやっていて、SANCHEZもそこで歌っていたのだが、夜になるとサウンド・システムを出してダンスを実施しいた様子。「教会でダンス?」とややビックラですが、ジャマイカではどうも一部の教会ではレゲエ・スターを育成すべく、積極的にこうした活動を実施しているところもある様子・・。で、その教会でのダンスを体験したSANCHEZは「おーっ! コレだ! コレこそが自分がやりたいコトだ!」と思ったそう。さらに「聖歌隊でゴスペルを歌うことと、ダンスでレゲエを楽しむことのどっちかを選ばんといかん。両方は無理」とも思ったらしく、「ダンスを! どっぷりとレゲエを!」と選択することにしたそう。そして、地元の人気サウンドのRAMBO INTERNATIONALでセレクターとして活動していくことに。当時のRAMBOは、FLOURGON、DADDY LAZARD、RED DRAGONの三人の人気DJが在籍して、かなりブイブイと言わせていた。SANCHEZはその三人のバックでセレクター/カット・マンとして活躍。で、この時代に「SANCHEZ」という名前も付けられたとのこと。どうもこの三人達とかとサッカーをして遊んだ時に、SANCHEZがオーバーヘッドで派手にキックしたのを見た周りが「(メキシコのサッカー選手の)HUGO SANCHEZみてぇーだー!」と騒いだのが由来とか。
で、セレクターとしてのSANCHEZですが、ただレコードをプレーするだけではなく、DJ達がマイクを握る時には、それに合わせて歌のコンビネーション・パートを歌ったり、結婚式とかそうした場に呼ばれた時も、レコードを回した後に、レコードをひっくり返してヴァージョン面に合わせて、その場に適したリリックで替え歌とかを歌ったりしていた様子。ただ、それを聴いていた人達は、あまりにもその歌が上手過ぎたからか、レコードをプレーしているのか、SANCHEZが実際に歌っているのかを区別出来なかったこともよくあったそう。で、そんな感じのタイミングで次の転機が訪れることに。
‡ サウンド・マンから人気シンガーに〜 周りからも「歌ったら?」と勧められることも増え、「うーむ、このままセレクターとしてだけ活躍しててもどーなんだろー。歌ったろか?」と悩んだりなんかして、SANCHEZは最終的に「よーし、歌ったる。セレクターはやーめた。過去を振り向かないで前進あるのみ!」と、シンガーとして活動していくことを決意。で、シンガーとして活動を開始。
初レコーディングの機会が訪れるのは1986年。まっ、22才ぐらいだから、レゲエでは決して早くはないかも。プロデュースはHUGH "RED MAN" JAMESで、デビュー曲は「Lady In Red」(CHRIS DeBURGHのバラード・カヴァー)。何かと「Red」と縁がある。で、コレがいきなり大ヒット! ジャマイカの各チャートをマッシュ・アップ! で、コレを機にあちこちのプロデューサーからオファーが殺到して、〈TECHNIQUES〉から「Lonley Won't Leave Me Alone」(GLENN MEDERIOSのカヴァー)、〈BLACK SCORPIO〉から「Let Me Love You Down」(READY FOR THE WORLDのカヴァー)、〈X'TERMINATOR〉から「Here I Am」(AIR SUPPLYのカヴァー)、〈DIGIATL-B〉から「Another Sad love Song」(TONY BRAXTONのカヴァー)とか、ビッグ・レーベルから続々とヒットを連発。88年の当時のジャマイカ最大のフェスの「REGGAE SUNSPLASH」では観客から5回もアンコールを受けたりとショーでも人気を集め、スターへの道を驀進することに。
で、90年代のSHABBA RANKS、NINJA MAN等を中心としたダンスホール/DJ全盛時代でも、その勢いは止まらずに〈STONE LOVE〉から「If I Ever Fall In Love」(SHAIのカヴァー)、〈DIGITAL-B〉から「Missing You Now」(MICHAEL BOLTONのカヴァー)とか、ヒットを連発。多くのシンガー達が苦戦する中、書き切れないぐらいのヒットでその人気は強固&不動のものになっていきます。
‡ SANCHEZが提示した「新しさ」〜 まっ、気付くように、90年代中頃まではとにかくカヴァー・ヒットが多かったです。デビューもカヴァー・チューンですけど、そのとろける様な美声で伸びやかに歌われるカヴァー・ソングで人気を獲得していました。圧倒的に男性アーティストが多いレゲエ・シーンの中で、このSANCHEZの美声は飛び抜けた存在感を持ち、またラヴ・ソングが多かったことで特に女性ファンから人気を集めました。 また、ゴスペル/R&B/ポップを通過・消化した歌唱法で、タフなリディムを朗々と歌いこなし、「タフなんだけどスウィートで洗練された感じ」のスタイルも新しかったと言えます。勿論、SANCHEZ以外にも、THRILLER Uとかもそうですけど、こうしたスタイルを提示していたシンガーは存在してましたが、明解に提示して大きな成功を獲得したという意味ではSANCHEZがズバ抜けていたと思います。で、このSANCHEZの登場と成功がレゲエ・シーンに新たな一つの模範にもなり、〈PENTHOUSE〉時代のWAYNE WONDERが良い例ですけど、数多くのプロデューサー/レーベルが「次のSANCHEZ」の育成に励み、「カヴァー&美声」とかSANCEHZの例に習って、新たにアーティスト達を売り出すキことになります。その結果、数多くの「SANCHEZ フォロワー」がシーンに現れることになります。
そんな多くのフォロワーの追随を受けてか、SANCHEZはよりオリジナル・チューンを積極的にリリース。で、GARNETT SILK、LUCIANO等のルーツ&カルチャー系のシンガー達が「ラスタ・ムーヴメント」として台頭してきた時代にも、〈XTERMINATOR〉からの「Praise Him」「Never Dis The Man」のスピリチュアルなメッセージ・チューンを大ヒットさせて、このあたりを契機に「カヴァー・ヒットばっか」のイメージを完全に払拭。軽快でカラフルなイメージはそのままに、重厚と熟成された男として進化を遂げます。ステージ・ショーでの圧倒的な素晴らしさもあって、シーンを代表するシンガー、BERES HAMMONDと共に、国民的シンガーとしてジャマイカでは絶大なる人気と支持を獲得します。あと、この時代には〈JAMMY'S〉〈JOHN JOHN〉との名曲も忘れられないところ。他からもリリース大量&ヒット大量。
‡ レゲエ/ダンスホール、そしてゴスペルでも活躍する国宝級シンガーに〜 そして、90年代末になると、SANCHEZは新たな挑戦も開始。それは、自らのルーツであり、敬虔なクリスチャンとしての気持ちから、ダンスホールでの活動と並行してゴスペル・レゲエのシンガーとして、作品をリリースしていくようになります。まっ、〈XTERMINATOR〉からの「Praise Him」「Never Dis The Man」もそうしたテーマでありましたが、通常のレゲエ/ダンスホール・アルバムとは区別して、自らがプロデューサーとして「ゴスペル・アルバム」を作り始めたのがこの時期から。VP RECORDSからも複数リリースされています。
こうして90年代末からはシーンの動きには左右されない確固たる人気と地位を背景に、自分のペースで自己のスタイルを追究していくようになります。マイアミに居を構えて、ジャマイカと行き来し出したのもこの時期から。ただ、だからと言って最前線から退いたのではなく、00年代もマイアミ繋がりの〈JOE FRASER〉からの「Frenzy」、〈CANNON〉からの「Groovin' Out On Time」をはじめ、ヒットを継続。シーンでの存在感を薄めることなく、トップ・スターとして君臨し続けていきます。それが現在でも継続中で、浮き沈みの激しいシーンの中では稀な存在、そして才能と言える感じ。まっ、カヴァー、オリジナル、ゴスペルとか色々とありますけど、何よりも一聴して「SANCHEZ!!」と痺れる歌声、特別な世界と時間へと誘う魔法なような歌声こそが最大の魅力と武器かと。時代を超えても枯れないその歌声は、レゲエ、そしてジャマイカの宝。ええ、ジャマイカの国鳥と言えばハミング・バードですけど、SANCHEZもそんな感じ。国宝級。是非、この機会に触れてもらえたら幸いです。
「知っての通り、これまでも〈PENTHOUSE〉のDONOVAN GERMAINとは互いに素晴らしいケミストリーを起こしてきた。あと、GERMAINとは音楽のコトは勿論だけど、個人的なコトも話せる関係をずっと保ち続けて来た。コレは素晴らしい関係で、素晴らしいコトなんだ。だって、多くのプロデューサー達は人の意見を聞かないし、そうした関係を築けないからね」「だから今回久し振りに『アルバムを作ろう』と決断した時に、GERMAINのコトがすぐ頭に浮かんだんだ」。SANCHEZは、今回の『NOW & FOREVER』の制作パートナーを、DONOVAN GERMAINと彼の〈PENTHOUSE〉とした理由をこう説明しています。
‡ 〈PENTHOUSE〉〜 知っての通り、〈PENTHOUSE〉は、DONVAN GERMAINを中心に、現在は共に大物プロデューサーへと勝ち上がったDAVE & TONY KELLYを擁し、80年代末〜90年代のシーンの顔として頂点に君臨した名レーベル。BUJU BANTON、WAYNE WONDER、CUTTY RANKS、TONY label等を輩出して、ダンスホール・シーンを先導すると同時に、BERES HAMMOND、MARCIA GRIFFITHS等のヴェテラン・シンガー達も時代の中で再生させたことは周知の通り。そのバランス感覚と、生み出す「新しさ」の背景には常に過去のレゲエへのオマージュとリスペクト、時代を受け継いでいく者としての使命が込められているところが最大の魅力。一時期はDONOVAN GERMAINがBUJU BANTONの専任マネージャーとして多忙を極めたことで減速もしたが、ココ最近では再び勢いを加速しており、MARCIA GRIFFITHS & BUSY SIGNALの「Love Is Automatic」、そして話題の新人ROMAIN VIRGOの育成等、特に「歌もの」での高い人気と評価を獲得しています。
SANCHEZとDONVAN GERMAIN/〈PENTHOUSE〉と言えば、「One In A Million」「Cherish Your Love」等のシングル・ヒットがありますが、今回は長い両者の関係、築き上げて来た経験と信頼を基に初めて挑むフル・アルバム。全14曲のうち、カヴァー曲は「Feel Good All Over」のみ。コレはOTIS BLACKWELLのソウル・スタンダードだが、SANCHEZはDERLOY WILSONのカヴァーにインスパイアされた様子。で、残りの13曲は全てオリジナル曲。
‡ 収録曲〜 TIGER WOODSの例の騒動から出来た「Won't Surrender」をはじめ、「Who Am I Without You」「When Someone Says I Love You」「Extraordinary」「My Everything」「I'm For Real」「Bet Any Amount」「Relaese That Property」等、新作にはSANCHEZならではのラヴ・ソング/ラヴァーズ・ロックが大量収録。ただ、SANCHEZは長年の楽曲制作のパートナーであるFITZ LIVEMOREと「これまでとは違う自分のイメージ、本当の自分をより打ち出したものにしよう」と幾多の歌詞&メロディを事前に作り出した。ゆえに、今回のラヴ・ソングは、多くのこれまでのSANCHEZのそれとは異なり、内容はただ甘くスウィートなものばかりではなく、男女の困難な関係も、互いの孤独もリアルに表現されている。そして、SANCHEZの歌声と、歌心がそれらの様々な状況と色彩と温度をイメージさせ、DEAN FRASER、MAFIA & FLUXY、MITCHUM KHAN、BUNNY FLETCHER等のDONVAN GERMAINが揃えた精鋭ミュージシャン達がそれを確かなカタチへと昇華されてみせている。また多くの曲のミックス作業を、現行シーンを代表する人気プロデューサー&エンジニアのSHANE BROWNEに預けたことも、それを現在の時代の音として完成させるのに成功している。現役の最前線シンガーとしての復帰に相応しい陣営をDONVAN GERMAINは用意してみせました。
またラヴ・ソング以外で特に秀逸なのは「I Can Feel It」。「セレクターがレコードを回し、人々がそれを受け止める、大きなスプリフ、コーラとラム、皆が楽しみを分かち合う」「ナイフやガンを持ってるな。音楽だけがそこにあれば良いんだ」と、セレクターとしてスタートした自分のキャリアらしい「ダンスホール・アンセム」。そして、最後に収められた「Enjoy Life」はメッセージ・チューン/バラード。「俺達ゲットーの貧しき人々が得られるものなんか何もないだろう、だから俺達はレゲエ・ミュージックを選んだんだ、レゲエ・ミュージックは確かにスマイルと人生を楽しむためのものを与えてくれるから」。ゲットー出身のSANCHEZ、レゲエに生きてきたSANCHEZを考えれば、与えてくれる説得力は十分だ。そして、この曲は昨今の荒れるレゲエ/ダンスホール・シーンを憂い、それに向けられた曲でもある。「争いゴトのための音楽ではないだろう」。「いつか地域ごとやストリートごとでの戦争や揉め事がなくなることを願ってるよ」「子供達に伝えるべきことがあるだろう」。そこにはクリスチャンとしてだけではなく、普遍の愛と団結を訴えるレゲエ男としてのSANCHEZの姿勢が詰まっている。
「復帰作だから、中途半端なものにはしたくなかった。しっかりと手応えのあるものにするのに時間も要した。リリースするにあたってとってもポシティヴな状況にある。この業界に長くいて、中にはみんなが求めていなかった曲もたくさん出してきたりもしていると思うよ。でも、今回は違うと思う。『みんなが求めていたSANCHEZの作品』だ。期待して欲しいし、信用して欲しいね」。
|
SONGS LIST |
『REGGAE ANTHOLOGY』シリーズ新作登場!
『HENRY"JUNJO"LAWES - VOLCANO ERUPTION』!
VP RECORDSの『REGGAE ANTHOLOGY』シリーズから新作が登場決定です。先に確認しておきますと、同シリーズは一つ/一人のレーベル/プロデューサー/アーティストにテーマを絞り、その足跡と活動を振り返った作品内容となっています。『ベスト盤/ヒストリー盤』といった考え方で良いかと思います。資料的価値も高く、コア・ファンのコレクションにも適していますが、ビギナーの入門盤としても適した優れた内容となっています。
これまで〈PENTHOUSE〉〈MUSIC WORKS〉〈CHANNEL ONE〉〈TECHNIQUES他のレーベル、またYELLOW MAN、NINJA MAN、
MARCIA GRIFFITHS、GARNET SILK、COCOA TEA他のアーティストをテーマとした作品が同シリーズからリリースされています。
■ テーマはHENRY "JUNJO" LAWES &〈VOLCANO〉!!
大ヒット満載40曲の2CD+激レア重要映像DVDの3枚組!!
US現地2月16日発売予定のシリーズ最新作のテーマ/主役は、〈VOLCANO〉レーベルと、そのプロデューサーであったHENRY "JUNJO" LAWES!
〈VOLCANO〉は80年代ダンスホールを代表するビッグ・レーベル。現在のダンスホール・ムーヴメントの発火点を担ったとも言える重要レーベル。現在でも世界の現場>?で鳴り続ける「定番/ファウンデーション・チューン」を大量に生み出した大人気レーベル。時代を超えたスタンダードですが、特に日本においては、00年にMIGHTY CROWNが正規盤ミックスCD『TRIBUTE TO VOLCANO - HENRY "JUNJO" LAWES』をリリースしたことで、若いダンスホール・ファンにもその魅力が広く知られることとなり、世代を超えて愛され続けている存在となっていることは周知の通り。また、オーナー/プロデューサーであったHENRY "JUNJO" LAWESの語り継がれるその強烈なキャラクターと生き様も「伝説」。 〈VOLCANO〉と同様に今なお多くのファンを惹き付けているのも知られたところ。
本作は、その〈VOLCANO〉レーベルの代表曲を40曲厳選して2枚のCDに収録。さらにその歴史を振り返る貴重映像約60分が収められたDVDが付いた3枚組商品。これまでも世界の様々なレーベルから〈VOLCANO〉音源の編集盤がリリースされていますが、本作はその内容とヴォリュームからして初のコンプリート・ベストと言えそうな作品。収録された40曲は、ダンスホール・マッシヴにとっては全て説明不要のビッグ・チューンなハズ。そして、〈VOLCANO〉全盛期のダンスの現場やレコーディング・スタジオの要素と、数多くのアーティスト/関係者が当時を語った重要・貴重映像で構成されたDVDはそれだけで十分に価値の高い激エクシクルーシヴな内容。伝説のスケート・ランドでの〈VOLCANO〉サウンド・システムのライヴ映像もレア。全ダンスホール/レゲエ・ファン必聴・必聴の大作。是非、本作は「マスト」の共通認識でタイトにチェック願います。
"HENRY"JUNJO"LAWES
■ HENRY "JUNJO" LAWESと〈VOLCANO〉ー。
HENRY "JUNJO" LAWES 〜 1960年にキングストン西地域のゲットー、オリンピック・ウェイで生まれたと言われています(1957年生まれの説も)。78年にGROOVING LOCKSという三人組のコーラス・グループの一員としてデビューしたのをきっかけに音楽業界に進出し、シンガーとして活躍、さらにプロデューサーとしての活動を開始しました。
交流のあったLINVAL THOMPSONとの78年レコーディングが初のプロデュース仕事とされていますが、その直後に駆け出しであったBARRINGTON LEVYと「Collie Weed」「Looking My Love」「Shine Eye Girl」を全てチャートの1位を獲得するビッグ・ヒットに導いたことで、プロデューサーとして注目を集めることになります。そして、“NEW ERA OF DANCEHALL=新時代のダンスホール”と呼ばれた新しいダンスホール・サウンドを次々と制作・リリースしていくことで、80年年に正式に〈VOLCANO〉を設立、80年〜82年にはシーンにおいて大きな存在となっていきました。(〈ARRIVAL〉や〈JAH GUIDANCE〉は〈VOLCANO〉以前のHENRY "JUNJO" LAWESのレーベル。)
“NEW ERA OF DANCEHALL”〜 HENRY "JUNJO" LAWESは、当初はチャンネル・ワン・スタジオで、当時の同スタジオの専属バンド的な立ち位置として活躍していたTHE REVOLUTIONARIESをバンドに、またKING TUBBYをエンジニアにレコーディング・セッションに起用することが多かったのですが、次第にROOTS R>?ADICSをバンドに、エンジニアにはKING TUBBYの弟子で、当時はまだ10代のSCIENTISTを起用していくようになります。
ROOTS RADICSは当時は、GREGORY ISSACS等のライヴのバック・バンドとして知られていましたが、そのプレーは“ロッカーズ・スタイル”で人気を獲得していたTHE REVOLUTIONARIESよりもヘヴィでタイトで、よりタフなスタイルでした。そして、それは当時の暴力と混乱に溢れたジャマイカ国内の社会情勢の空気に合致していたもので、ジャマイカのゲットー・ピープルが求める「よりタフなサウンド!」でした。また、若きSCIENTISTがそのROOTS RADICSのタフな演奏を、音数をシンプルかつ大胆に、重低音を効かせてミックスした当時として斬新なサウンドも、そうした時代の空気を見事にとらえたもので、人々が求める新しいものでした。
「80年代ダンスホール・ブーム」の立役者〜 HENRY "JUNJO" LAWESは、ROOTS RADICSとSCIENTISTと作り出したこの“NEW ERA OF DANCEHALL”と呼ばれた新しいサウンドで時代を変革していきます。この時期は、それまで以上にサウンド・システム/ダンスの現場が大きな人気と勢いを集めていった時代でした。都市部中心であったダンスが以前にも増して地方にも進出していくようになり、娯楽の少ない島内ではダンスが大きなブームとなっていきます。
〈VOLCANO〉のヘヴィでタイトでタフな新しいサウンドは、ダンスの大音量スピーカーとの相性も抜群で、そうしたダンスの現場での圧倒的な支持が〈VOLCANO〉の勢いをさらに加速させていきます。HENRY "JUNJO" LAWESも、自らのサウンド・システム「VOLCANO」を運営して、アグレッシヴな展開でその人気を強固なものとしていきます。また、この時代はダンスの現場から新しいヒットだけではなく、アーティストも多数生まれてきた時代で、HENRY "JUNJO" LAWESもCOCOA TEA、FRANKIE PAUL等の新しいアーティスト達も続々と発掘して、彼らをスターダムへと押し上げていきます。
レーベル、サウンド、また新たな才能を育成する存在、新たな時代の担い手としてHENRY "JUNJO" LAWESと〈VOLCANO〉は圧倒的な人気と支持を獲得して、シーンの中心的な存在へと勝ち上がります。そして、このHENRY "JUNJO" LAWESと〈VOLCANO〉の起こしたムーヴメント/エンターテイメントこそが、「80年代ダンスホール・ブーム」のきっかけでした。
「ダンスホール」を世界に伝えた存在〜 この〈VOLCANO〉を発火点とした「80年代ダンスホール・ブーム」と「〈VOLCANO〉黄金時代」を決定づけたのが、YELLOW MANの大ブレイクでした。「スラックネス」と呼ばれる下ネタを粋なリリックで表現してみせることを得意としたこの天才DJとHENRY "JUNJO" LAWESとの出会いと、両者による「Zungguzung・・」「I'm Getting Maried In The Morning」他の数々の特大ヒットは、島全体を文字通り「噴火」させて、レゲエを「ダンスホール時代」へと突入させました。そのマグマはジャマイカを超えて、世界にYELLOW MANだけでなく、〈VOLCANO〉の作り出した当時の最先端ダンスホール・サウンドを伝えることに成功しました。YELLOW MANもこの大ブレイクでメジャー・レコードへと進出、そして「ダンスホール」もそれと合わせて世界へと進出していきます。
現在のムーヴメントの出発点〜 こうしたYELLOW MANとの成功もあって、〈VOLCANO〉は84〜85年のシーンの頂点に君臨することになりますが、〈VOLCANO〉以外にもそのライヴァルであったGEORGE PHANGの〈POWER HOUSE〉他、数多くのレーベルが活躍したり、新たなスターが大量に登場したり、「クラッシュ盤」と呼ばれる新しいスタイルでのアルバム・リリースが提案されたり、この時代のダンスホールはとにかくクリエティヴィティに満ちていました。
そして、そうした流れと勢いが、85年の〈JAMMY'S〉による「怪物リディム=SLENG TENGの発明」へと繋がり、シーンは現在へと続くデジタル・ダンスホール時代へと突入して、リリース量も急増して、その勢いとスピードは一気に加速されていくことになります。で、こうして見ていくと、現在も受け継がれている「ダンスホール・ムーヴメント」という意味では、この〈VOLCANO〉は一つの重要なルーツで、大きな発火点だったと言えると思います。
ライカーズ・アイランド〜 HENRY "JUNJO" LAWESは85年に拠点をニューヨークへと移します。そして、ジャマイカで起きた「SLENG TENG=デジタル革命」の動きには対応出来ず、シーンから姿を消すことになります。ただ、それはジャマイカから離れたからだけでなく、HENRY "JUNJO" LAWESが「ある理由」によって、ニューヨークのライカーズ・アイランド刑務所に収監されてしまったことが最大の理由でした。約6年間服役していましたことで、〈VOLCANO〉は事実上終わってしまいました。なお、この期間に盟友でもあったCOCOA TEAは「Rikers Island」というHENRY "JUNJO" LAWESに向けてのチューンもリリースしています。
復帰〜 HENRY "JUNJO" LAWESは、91年にジャマイカ・シーンへと復帰し、〈VOLCANO〉を再始動させます。以前のように、ROOTS RADICSやSCIENTISTを起用したものではありませんでしたが、COCOA TEAをはじめ、SANCHEZやSHAKA SAHMBA等の作品を積極的にリリース、特に当時のスーパースター=NINJA MANとは幾つも優れた作品をリリースして、再び注目を集めることになります。また、注目を集めたのは、その作品だけではなく、HENRY "JUNJO" LAWESその人でもあり、以前からも奇天烈な性格と個性で知られていましたが、この時期は常にカラフルなウィッグを被っていたり、突飛な格好や立ち振る舞いでも注目を集め、その華々しい過去や服役とかもあって、「謎めいた存在」とかを超越した「生きる伝説」と化していました。
銃撃死〜 1999年6月にHENRY "JUNJO" LAWESは、滞在先のロンドンで銃撃されて亡くなります。車に乗車していたところを何者かに襲われた様子です。「ある理由」と様々な憶測が流れましたが、理由はハッキリとはしません。ただ、あまりにも「らしい」最期だったとも言えるかもしれません。
振り返れば、プロデューサーとしてのHENRY "JUNJO" LAWESが優れていたのは、常に時代の空気と人々の希求するものを読み取る確かなセンスと、それを実現させる才能だったかと思います。80年代の〈VOLCANO〉黄金時代は勿論、90年代の復帰後の当時「制御不能」とされたNINJA MANと作品群もそうしたHENRY "JUNJO" LAWESのセンスと才能、それは実力・人間力と置き換えられるかもしれませんが、それによるものだったと想像します。伝えれる奇行は無限で、クレイジーで神秘的な性格だったことは確かの様子。ただ、そうしたHENRY "JUNJO" LAWESのコトを理解出来る者は少なかったかもしれなかったですが、HENRY "J>?UNJO" LAWESはそうした周りのコトを理解していたようにも思います。
不謹慎を承知で言えば、その強烈な個性と破天荒な生き様を考えれば、あまりにも出来過ぎた死に方。それは、HENRY "JUNJO" LAWESらしい見事な自己プロデュースだったようにも思えてきます。残した多くの名曲/作品、その功績と同様にHENRY "JUNJO" LAWESの存在は偉大でワン&オンリー。作品だけではなく、存在そのものがレゲエで、ダンスホールでした。
今回の『REGGAE ANTHOLOGY - HENRY "JUNJO" LAWES - VOLCANO ERUPTION』を通して、HENRY "JUNJO" LAWESと〈VOLCANO〉の存在と、その功績と魅力がより多くの皆さんに届くことを願います。長くてゴメンよ。
さらに長い、JUST MY IMAGINATIONはこちらから!