RICKY TROOPER来日記念INTERVIEW


RICKY TROOPER来日記念INTERVIEW
「生きる伝説」が語る“親友”GARNETT SILK。

RICKY TROOPER  RICKY TROOPERが11月に来日しました。約3週間日本各地を怒濤の日程で周りました。本人によると6年振りの来日だったそうです。

 説明を必要としないと思いますが、RICKY TROOPERは言うまでもなく、KILLAMANJARO在籍時代から、現在の独立後のTROOPER SOUNDまで20年以上に渡って、サウンド・シーンを代表するトップ・サウンド・マンで、ご存知の通り、特に「サウンド・クラッシュ」で圧倒的な戦歴を誇るスーパースターです。現在の全てのサウンド/サウンド・マンには大きな影響を与えていることは間違いなく、ある意味「生きる伝説」だったりもします。


 今回は久々に直接会って、初めてちゃんと話を聞くことができました。最終の東京公演を前に移動等でも疲れていて、「声が出ない」と急な自分の依頼に最初は乗り気ではない様子でしたが、話し出したら枯れてた声も復活して、途中からは熱く対応してくれました。その時の会話をドーンと掲載です。TROOPERの「クラッシュ番長」「ハードコア」なイメージが少し変わるかもしれません。


RICKY TROOPER

◆ 疲れているところ突然無理を言ってスイマセン。自分にとってもヒーローであるアナタに時間を割いて頂いてることに感謝します。少しだけ質問させて下さい。

RICKY TROOPER(以下T) 全然声が出ないんだ、早めに終わらせてくれ(枯れた小声。喉を摩りながら、首を横に振る様子)。


◆スイマセン。KILLAMANJARO時代から何度もアナタのプレーを観ています。ジャマイカ、ニューヨーク、日本で観ています。最初は95年でした。ポートモアのKING ADDIESとのクラッシュでした。

RICKY TROOPER

 アレはビッグ・クラッシュだった。


◆そうでしたね。で、あの時から既に16年で、それ以前のを含めるとかなり長い期間、アナタはトップ・サウンド・マンとして活躍し続けています。それを可能としているものはなんですか?

 音楽への愛情だ(突然声が復活で前のめりに)。子供の時から音楽しか知らない。子供の時に音楽を聴く人に与える喜びを知って以来、俺は音楽を聴くだけでなく、人に伝えて喜びを与えることしか考えてこなかった。ずっとその魅力に取り憑かれている。長くやっている。確かに、この仕事は優しくない。時に人から愛され、時に人から嫌われたりもする。味方もいれば、敵もいる。それでも俺はこの仕事を続けている。それは自分の音楽への愛情の表れでもあるし、自分を求めてくれている人達への愛情でもある。何よりも音楽と接している時の自分の熱くなる感情を抑えられないんだ。年は取ってきているのかもしれない。でも、身体や外見は変わったとしても、俺の中味は何も変わらないんだ。ずっと子供の時に音楽に惹かれた時のままに現在も夢中なんだ。若い、子供の時のままだ。音楽への情熱?、そうだ、情熱を失ったことはない。


◆アナタがKILLAMANJAROのトップ・セレクターとして活躍したことで、当時に停滞していたサウンド・クラッシュのカルチャーが再炎、世界中にその魅力を伝えたと自分は見ています。

 自分の活動を評価してくれるのは有り難い。確かにジャマイカやニューヨークだけでなく、ヨーロッパや日本にもそのカルチャーが広まることに何か貢献できているのかもしれない。明日に日本を出て、ヨーロッパをツアーするが、そうやって色々な国に行くと、自分を見ただけで興奮したり、中には泣き出す人もいて、自分が特別に思える瞬間はある。それを嬉しく思っている。


◆時間もないので、違う質問をさせて下さい。先週の12/9(日本時間12/10)はGARNETT SILKの命日でした。アナタは『KILLAMANJARO REMEMBERS GARNETT SILK』(現在廃盤)をリリースしました。僭越ですけど、自分が担当させて頂いた作品で、当時にアナタとSONIC SOUNDSで一度打ち合わせでお会いしています。今回は改めて、アナタとGARNEETT SILKのコトを聞きたいんです。あの時に聞けなかったことをココで教えて欲しいんです。 RICKY TROOPER

 (渡した日本盤を手にして)、コレか。コレは忘れられない。先に言っとくが、この作品は日本限定のリリースだったんだ。現在でもそうだ。その後に〈TROJAN〉のコンピレーションに遣われていたり、〈JAMDOWN〉や幾つかのヨーロッパの会社がリリースしているが、それは俺の理解では全てブートだ。俺は認めていない。GARNETT SILKが亡くなっても、その権利は生きている。彼の遺族に払われるべき印税もあるハズだ。GARNETT SILKが自分の家族に残したいものもあったハズだ。アーティストに対するリスペクトがない奴が多過ぎる。俺は自分で何度か〈TROJAN〉にも電話した。彼らは回答すらしない。自分のコトすら知らない。アイツらは泥棒だ。


◆GARNETT SILKとの出会いを教えて下さい。

 最初にGARNETT SILKの存在を知ったのはSILVER HALKのダブだ。そうだ、STEELY (〈STEELY & CLEVIE〉のSTEELY JOHNSON)のサウンドだ。その後にKILLAMANJAROにダブを録りに来た。その時に初めて会った。普通に2曲歌って帰ろうとしたので、「それでいいのか?」と俺は聞いた。GARNETT SILKは「どういうことだ?」っ聞き返してきたから、「ハーモニーを付けたりして、完璧に仕上げるつもりはないか?」って言ったんだ。「耳にちゃんと残って、聴こえ方を良くするためには全てを完璧に作らないといけない」みたいなことを言ったんだ。それ以来、親友になった。そうだ、GARNETT SILKは音楽を真剣に考え、完璧を求める男だった。それが俺と同じだった。


◆最初の時のGARNETT SILKの印象を教えて下さい。

 最初に聴いた時から、GARNETT SILKのコトは分かった。自分の耳がそう反応したとしか説明出来ないが、一聴して特別な存在と分かった。他のアーティスト、曲でもそうだが、俺は自分の耳の反応でしか判断しない。その基準は自分の頭の中にあるものとしか説明できないが、それに従っている。俺の耳が最初に聴いた時から反応したアーティストはこれまでに4人だけだ。GARNETT SILK、LUCIANO、SIZZLA、そしてANTHONY Bだ。その4人は一聴して耳が反応した。


◆全員ラスタでコンシャスなアーティストですね。

 俺はラスタではないが、正しいメッセージを音楽で伝えるという意味で垣根は作っていない。ジャーであろうと、ジーザスであろうと、アラーであろうと、ブッダであろうと、何を信仰していても構わない。音楽を通して、自分の共感するポジティヴなマインドを伝えたいだけだ。


◆サウンド・クラッシュにおいてもそれは同じですか?

 クラッシュは音楽を使ったエンターテイメントだ。その中で相手を罵る言葉も吐くし、相手を攻撃するチューンもプレーする、そうだ「ぶらっくらー」とか言う、でも、それは本当の殺し合いでもない。その時間をその場の全員で楽しむことを目的としていて、それを通じて強く、前向きな気持ちを得るためであったりする。相手を打ち負かすチューンだけで成立するものではない。客を楽しませて共感できるチューンを競い合う場でもある。別にクラッシュ相手にガンを向けることはない、終わって殴り合うこともない。ピースだ。その場になると燃えてしまう自分をどう説明していいかは分からない。クラッシュの時にもう一人のRICKY TROOPERになる、といった感じだ。俺にはそうした部分がある。演じているではなく、純粋に熱くなる自分がいる。ただ、それが自分を正しくあるために存在しているのは間違いない。楽しんで、楽しませて、ポジティヴになれる自分だ。


◆KILLAMANJAROから自身のSOUND TROOPERへ独立したのはなぜですか?

 世界に音楽を届けるための判断だ。例えばTHE WAILERSだ。BOB MARLEY、BUNNY WAILER、PETER TOSHがオリジナルだ。最終的にBOB MARLEYは一人になった。BOB MARLEYは自分の音楽を信じて、それを世界を届けるために自分の道を選択した。それでBOB MARLEYは世界で知られた。そういうことだ。 自分がBOB MARLEYと同じ大きな存在という意味ではない。誰にでも夢があるという意味だ。BOB MARLEYと同じように自分も夢を持った人間という意味だ。

RICKY TROOPER◆もう少し続けても平気ですか?

 構わない。もっと続けてくれ。聞かれたことには何でも答える。それより、そのもう一枚のCDは何だ?

◆ああ、コレ(『I LOVE REGGAE - NON STOP MEGA MIX VOL.3』現在廃盤)もアナタが作ってくれたミックスCDで95年にリリースしたものです。

 初めて見た。作ったかもしれないが、覚えていない。自分のプロデュースした曲もたくさん入っている。くれ。ダメか。そうか。(しばらくCDを凝視)。見ろ、この裏の写真を。若い頃の俺だ。今の自分の息子に恐ろしく似ているな。そっくりだ。日本で撮った写真か? 覚えていない。KILLASANの時か? そうかTAXI HI-FIの時か。東京か。16年前だ。ああ、そうだ、GARNETT SILKの息子も大きくなったんだ。現在はラッパーをやっている。そうだ、GARNETT SILKの息子がラッパーだ。素晴らしいんだ。まるでアメリカで育ったかのようにラップするんだ。そうだ、GARNETT SILKの家族とはずっと付き合い続けている、当たり前のことだ。


◆GARNETT SILKとはホントに仲良かったんですね。

 親友だ。あと、GARNETT SILKの名誉のために言っておきたいことがある。一時期シーンから「消えた」時期があった。それを「コカインやっていたから」とか言う奴がいる。死んだ理由もそうしたコトと絡めて言う奴がいる。言っておくが、それは決してない。GARNETT SILKはコカインどころか、タバコも、酒も、そしてガンジャもやらない男だった。少なくとも俺は一度もそうした場面を見たことはない。ただ、食事には気を遣っていたし、アイタルなものしか口にしなかったが、決して丈夫ではなかったりもした。「消えた」と言われた時も、レコーディングやショーに疲れて体調を悪くしていただけだ。休んでいただけだ。あと、GARNETT SILKは揉め事に巻き込まれるタイプの人間ではなかった。怒ったことも見たコトがない。それどころか、いつも揉めている人達を仲裁するような男だった。だから、GARNETT SILKの曲は現在でも人に愛される。歌う人間によって曲の寿命は変わる。俺は何人も変容してしまったアーティストを知っている。良い奴で、ヒットもあったのに消えてしまった奴、曲がプレーされなくなった奴を知っている。理由はその本人だ。

RICKY TROOPER

◆それはアナタ自身も意識されていることですよね?

 勿論だ。人に音楽を届けて求められ続けるには正しい行動を取らないといけない。俺は1ドルを音楽で稼いだら、50セントを自分のものにしている。それは養う家族がいるし、食事、家、教育と彼らに残さないといけない責任があるからだ。ただ、全部を自分のものにはしない。残りの50セントは、人のために使う。俺はジャマイカの子供達や恵まれない人達に使っている。自分で子供達の鼓笛隊を結成してその活動資金だけでなく、ユニフォームを作ってあげたりもしている。彼らが音楽を楽しめる環境を作ってあげたいと考えている。音楽で稼いだ金は音楽に還す。今回の来日中にジャマイカで世話している子供が射殺された。三日前のコトだ。それを思って、昨晩はプレーしながら泣いてしまったりもした。今回のツアーで得たものも、少しでもその遺族に届けたいと思っている。俺は自分の金のためにプレーしたことは一度もない。それは確かだ。その気持ちが俺をここまで長く支えて、現在で人に求められる存在にしてくれていると信じている。


◆大変失礼ですけど、思っていたイメージと随分違う方ですね。真面目と言いますか・・。

 人は会ってみないと分からない。話してみないと分からない。人が思う自分のイメージがどういうものかは知らないが、会って、話してから判断してくれればいい。自分も人に対してそうしている。俺が現在でも世界中から呼ばれ続けるのも俺だからだ。


RICKY TROOPER

◆そろそろ時間ですか・・?

 いや、構わない。何でも聞いてくれ。答えたい。


◆ではもう少し音楽の話を。自分を除いて好きなサウンドはありますか?

 そうだな、あえて言うならSTEREOPHONICだ。そうだレジェンドのサウンドだ。子供時代に彼らのプレーする〈STUDIO ONE〉〈TREASURE ISLE〉に夢中になった。あと、KING STEREOGRAPHも好きだ。彼らもレジェンドだ。特にJAH SCREWが好きだった。そうだ、〈TIME 1〉のJAH SCREWだ。彼はSTEREOGRAPHのエンジニアもやっていて音も良かった。彼がエンジニアをした時のRANKIN JOEがDJした時は最高だった。


◆最後に難しい質問かとは思いますが、自分にとっての「永遠の一曲」はなんですか?

 難しいな。あえて選ぶとしたら、GARNETT SILKと録った「(Make A)Joyful Noise」だ。そうだ、そのCD(『KILLAMANJARO REMEMBERS GARNETT SILK』)にも入っている。この曲は、どんな肌の色でも、どんな人種でも、どんな国籍でも人を愛するし、平和を愛するし、神を信仰するし、そして音楽を愛して分かち合うことを伝えている曲だ。そうだ人は愛し合う。誰であろうと違いなんてなにもないんだ。それを音楽は伝えるという意味なんだ。俺はいつもその精神を大切にしてプレーしているんだ。クラッシュでもジョグリンでも、俺の中では違いはない。人を楽しませて、自分が楽しむ、ポシディヴになるという意味では同じことなんだ。


◆そろそろ時間みたいです。素晴らしい話と時間に感謝します。今日はホントにありがとうございました。無理を言ってスイマセンでした。

 いや、こちらこそありがとう。聞いてくれて感謝している。


インタヴュー & 文責:八幡浩司(24×7 RECORDS., INC.)
写真:24×7 RECORDS., INC.
@12月13日/東京STRUGGLE
取材協力:TERU from YA-LOW & STRUGGLE



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